研究課題/領域番号 |
25292094
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
韓 慶民 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, チーム長 (40391180)
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研究分担者 |
壁谷 大介 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (30353650)
稲垣 善之 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (00353590)
野口 享太郎 独立行政法人森林総合研究所, 四国支所, 主任研究員 (70353802)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マスティング / 至近要因 / 貯蔵資源量 / 窒素 / バイオマス / 配分 / 生態・生物多様性 / 需給バランス |
研究概要 |
樹木の結実量は、様々な要因で大きく年変動する。この結実の豊凶現象(マスティング)については、これまで豊凶の周期性の意義を進化生態学的な視点から解釈しようとする研究(例えば「捕食者飽食仮説」など)が多く、結実豊凶そのもののメカニズムの解明に踏み込んだ研究は限られていた。その中には、種子生産の豊凶変動を植物体内の貯蔵資源の蓄積と枯渇の年収支から説明しようとする理論的モデルなどが知られている。しかし、長期にわたって豊凶自体の観測データを加えた樹体内の資源の配分プロセスを明らかにした研究例は極端に少ない。本研究では、窒素化合物と光合成産物の非構造性炭水化物(NSC)の樹体内の貯蔵機能の経年変化に着目し、結実豊凶の機構解明に取り組んでいる。 2005年豊作以降継続測定したブナ成木の枝・幹・根の窒素濃度をまとめ、個体の貯蔵窒素量の動態を推定した。その結果、豊作が樹体内貯蔵窒素量の減少をもたらしたことが解明され、窒素がブナ結実豊凶の制限要因であると示唆された。一方、この貯蔵窒素量は、リターから推定した種子生産に必要な窒素量に比較して2-3倍高かった。これは、年貯蔵量ではなく、花芽分化期における窒素資源の需給バランスが結実豊凶の解明に重要であるを示している。そのため、地上部各器官と細根の成長バターンを調査し始めた。 この成果は、群落レベルの結実の豊凶同調を左右するメカニズムの解明に新たな扉を開くものであり、ブナなどの堅果類樹木の結実間隔や着果量を予測するだけでなく、今後予想される気候変動に対応したブナ林の天然更新や保全技術の開発、さらにはツキノワグマなどブナの結実に依存する野生生物の保護や管理手法の策定など、幅広い分野での応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹木結実豊凶に関する資源制限要因を長期間にかけて調査した結果、窒素資源がその制限要因のひとつであることは明らかになった。その次に、花芽分化期における資源需給バランスを評価することはマスティング現象の解明に重要な課題である。そのため、2013年に測定機器の設置などを行い、観測システムが整った。しかし、調査林分は2013年に予想外に結実があり、研究期間内に次の結実年はあるかどうかは、研究の目的が達成できるかの鍵である。総合的に概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
予期せぬ悪天候や結実頻度に備えて、サンプル個体数を2013年に40個体まで可能にしたため、当初計画通りに進む。
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次年度の研究費の使用計画 |
樹冠へのアクセス可能の個体数は確保するために、2013年に取り付けた一本梯子の数は、当初計画より少なくてもできたため、次年度使用額が生じた。 今後の開花・結実状況に応じて、臨機応変に調査旅費、採取される予定のサンプルの分析、または成果発表に使用する予定である。
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