研究課題/領域番号 |
25292094
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研究機関 | 国立研究開発法人 森林総合研究所 |
研究代表者 |
韓 慶民 国立研究開発法人 森林総合研究所, 北海道支所, チーム長 (40391180)
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研究分担者 |
稲垣 善之 国立研究開発法人 森林総合研究所, 四国支所, 主任研究員 (00353590)
壁谷 大介 国立研究開発法人 森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (30353650)
野口 享太郎 国立研究開発法人 森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (70353802)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マスティング / 資源 / 配分 / 肥大成長 |
研究実績の概要 |
樹木の結実量は、様々な要因で大きく年変動する。この結実の豊凶現象(マスティング)については、これまで豊凶の周期性の意義を進化生態学的な視点から解釈しようとする研究(例えば「捕食者飽食仮説」など)が多く、結実豊凶そのもののメカニズムの解明に踏み込んだ研究は限られていた。その中には、種子生産の豊凶変動を植物体内の貯蔵資源の蓄積と枯渇のバランスから説明しようとする理論的モデルなどが知られている。しかし、長期にわたって豊凶自体の観測データを加えた樹体内の資源の配分プロセスを明らかにした研究例は極端に少ない。本研究では、窒素化合物と光合成産物の非構造性炭水化物の樹体内の貯蔵機能の経年変化に着目し、結実豊凶の機構解明に取り組んでいる。 デジタルデンドロメータより幹の肥大成長の季節変化を詳細に調べた結果、結実個体では肥大成長速度が非結実個体より低かったため、年肥大成長量が低下したことを解明した。一方、幹の肥大成長は8月の下旬から9月の上旬に停止して、結実の有無による成長期間の長さに差が見られなかった。また、枝及び殻斗のバイオマス成長が7月下旬に終わり、その後種子が充実する成長期に入った。これらの結果から、結実に伴う資源需要の増大に応じて、各器官の成長季節変化のパターンを調整することによって、供給不足をある程度回避していると示唆された。この成果は、群落レベルでの結実の豊凶同調を左右するメカニズムの解明に重要であり、ブナなどの堅果類樹木の結実間隔や着果量を予測するだけでなく、今後予想される気候変動に対応したブナ林の天然更新や保全技術の開発、さらにはツキノワグマなどブナの結実に依存する野生生物の保護や管理手法の策定など、幅広い分野での応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結実に伴う各器官の成長季節パターンより、花芽形成期における資源の供給バランスが解明されました。また、結実による炭水化物の配分変化の成果をとりまとめた論文は、現在修正中であり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
凶作になる今年の資源供給バランスを継続調査を行うことで、4年間の結果より、結実豊凶による資源の需給バランスの役割を評価して、計画通りに目標が達成できると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に調査を実施することができたため、それに係わる経費が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の国際学会発表の旅費として使用する。
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備考 |
平成27年版 研究成果選集 2015
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