研究課題/領域番号 |
25292097
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
市原 優 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, グループ長 (10353583)
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研究分担者 |
升屋 勇人 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (70391183)
山路 恵子 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (00420076)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 林学 / 菌類 / 植物 |
研究概要 |
ナラ類を大量に枯死させる「ナラ枯れ」は、落葉性のコナラやミズナラだけでなく、常緑のシイ、カシ類にも被害を及ぼしている。これらのブナ科樹木には病原菌の侵入によっても枯死しない樹種があり、ナラ枯れに対する抵抗性の程度に樹種間で差異がある。一方、病原菌の「ナラ菌」には同一種内の菌株によって病原力に差異がある。このような抵抗性と病原力の差異を背景として、本研究では、抵抗性に関与する防御物質と、病原力に関与する毒素の化学物質に着目して、化学物質のもつ病害抵抗性因子と病原力決定因子としての役割を評価し、樹木と病原菌の相互作用系を解明すると共に、ナラ枯れ抵抗性選抜のための基礎知見として寄与することを目標とする。本年度は、感受性のコナラにおいて、心材抽出物に認められた抗菌活性物質をカラムクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフ装置により分離精製し、既知の抗菌物質2,6-dimethoxybenzoquinoneに加え4種の抗菌物質(syringaldehyde、scopoletin、vanillin、3,4,5-trimethoxyphenol)を同定した。これらの物質は、ナラ菌接種に対してコナラ辺材で濃度が高まったことから、ナラ菌の侵入に対して防御物質として機能していると考えられた。さらに、数種のシイ、カシ類の樹種にナラ菌を接種し、それぞれの樹種の防御物質の精製と同定を実施している。本成果の一部は、第125回日本森林学会(平成26年3月、さいたま市、日本森林学会員対象)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナラ枯れに対する防御物質をコナラから抽出し同定することができ、これらの物質の集積を定量することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ミズナラの防御機構における防御物質の寄与を明らかにするために、前年度に調査しているミズナラ樹幹のメタノール抽出物からの抗菌物質の精製同定を継続し、ミズナラの防御機構を評価するための抗菌物質を揃える。さらに、被陰等により防御能力を低下させたミズナラと健全個体間で、防御物質の変動を測定することによって、ミズナラの防御機能における抗菌物質の寄与を明らかにする。全国のナラ菌の菌株収集を継続し、さらに、集めたナラ菌の菌株を培養し、毒素産生力を菌株間で比較することによって、毒素産生能の差異を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品購入時に入札により予定額よりも低価格で購入できたため。 化学物質の定量などに用いる消耗品の薬品やガラス実験器具等の購入に使用する。
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