研究課題/領域番号 |
25292099
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 覚 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特任准教授 (30353866)
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研究分担者 |
志知 幸治 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (10353715)
青山 道夫 福島大学, 環境放射能研究所, 特任教授 (80343896)
伊藤 江利子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (20353584)
小野 賢二 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (30353634)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境分析 / 放射線 / 土壌圏現象 / 気象学 / 林学 |
研究実績の概要 |
本研究は、福島第一原子力発電所の事故により森林に降下したCs-137の長期的な分布予測精度を高めるために、原発事故前の林地斜面に存在していた過去50年間の大気圏核実験による降下Cs-137の林地斜面への沈着分布特性を解明し、原発事故由来のCs-137の50年後の残存分布予測を行うことを目的としている。 平成26年度は、土壌中のCs-137定量法をさらに改良するためにNaIシンチレーションカウンター分析にスペクトル分離法を導入した。これにより、カリウムを多く含む試料でK-40のコンプトン散乱ピークのためにCs-137が低濃度な試料の定量精度が低下していた問題を解決することができた。 土壌中のCs-137沈着量の分析は、全体の1/8に当たる全国316地点を地理的に均等に選択して、先行分析を行った。深さ30cmまでの沈着量は全国平均で1.7kBq/m2であり、沈着量は東北から北陸の日本海側で多かった。これは過去にグローバルスケールで推定された日本周辺のCs-137沈着量の推定結果と概ね一致しており、日本国内の沈着量を精緻化した結果が得られたと考えられる。一方、10mメッシュのデジタル標高モデル(DEM)データから算出した調査地点の標高、傾斜、集水面積、地形水分指数などの地形特性値をもとに、全国を10区分してCs-137沈着量に及ぼす影響を解析した結果、3地区でのみ標高、斜面方位、傾斜に有意な効果が認められたが、全国をまとめた解析ではいずれの地形特性にも有意な効果が認められなかった。地形に起因する土壌侵食等の斜面上の物質移動が沈着量に及ぼす影響は限定的なものであると推定した。以上のことから、大気圏核実験が行われた1950~60年代に森林に降下したCs-137の大部分は、50年を経ても河川等を経由して森林系外に流出することなく森林土壌中に留まっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌中のCs-137の定量するためにスペクトル分離法を採用したことで定量精度が向上し、測定データセット全体の信頼性が確立されたこと。また、分析対象試料を1/8に縮分して迅速に分析を行うことによりCs-137の沈着量の全国傾向を把握し、今後の試料分析とデータ解析の見通しを明瞭にすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に得られたCs-137沈着量の全国分布概況を参考に、平成27年度は、福島県およびCs-137沈着量が多い地域に重点を置いて試料の分析をする。土壌の深度別データを解析し、土壌中での二次移動特性について検討する。また、リターへ沈着したCsの存在形態を逐次分画法によって明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析に使用するNaIシンチレーションカウンター(ガンマーカウンター)の保守契約費は契約満了時(平成27年7月)に請求されるためにその分の経費を平成27年度残すようにしたため、また、H27年度もH26年度なみに人件費を確保するため。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度もCs-137分析を行うための試料の前処理やデジタル標高モデルの解析作業に人手を要する。そのため、分析補助等の非常勤職員の人件費に経費を重点的に配布する。
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