常温溶融塩ともいわれるイオン液体に極性有機溶媒(共溶媒)を混合したイオン液体・有機溶媒混合溶媒系に、微粉砕化した木質バイオマスを温和な条件で完全に溶解できること、さらにエステル化等の均一誘導体化ができることを報告している。このイオン液体混合溶媒系はNMR(核磁気共鳴)法を用いた細胞壁全成分(リグニン、セルロース、ヘミセルロース)の解析に利用できる。本研究では、さらに温和な条件でセルロース等を溶解できる新規イオン液体混合溶媒系を探索するとともに、この溶媒系を発展させ、植物細胞壁の網羅的解析および木質バイオマスの有用物質への変換のためのプラットフォームとすることを目的としている。 テトラブチルフォスホニウム塩を陽イオン、アミノ酸を陰イオンとするイオン液体を合成し、セルロースの溶媒としての可能性を検討した。その結果、イオン液体のみの場合では全くセルロースを溶解できないが、極性有機溶媒を共溶媒として用いるとセルロースの良溶媒となることがわかった。また、このアミノ酸由来のイオン液体有機溶媒混合溶媒系から再生したセルロースの酵素加水分解では、グルコースへの変換率がほぼ100%となり、イミダゾリウム塩タイプのイオン液体よりも効率よくグルコースを生成することがわかった。特に、ジメチルグリシンを陰イオンとして用いたイオン液体では、酵素との適合性が高く、イオン液体混合溶媒系が13%存在する条件でも、約80%の変換効率があることがわかった。
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