研究課題/領域番号 |
25292108
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
大村 和香子 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 室長 (00343806)
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研究分担者 |
東 政明 鳥取大学, 農学部, 教授 (20175871)
伊藤 優子 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (60353588)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 保存・文化財 / 昆虫・動物 / 代謝生理 |
研究実績の概要 |
住宅部材や外構用途に用いられる木材保存剤には、従来より銅系薬剤が使用されてきた。これまでわが国の耐蟻性評価にはイエシロアリだけが用いられてきたが、イエシロアリと生態が大きく異なる外来種アメリカカンザイシロアリでは、銅系薬剤に対する耐性がイエシロアリよりも高いことがわかってきた。昨今、アメリカカンザイシロアリの被害が国内各所で生じていることから、アメリカカンザイシロアリがなぜイエシロアリよりも銅系薬剤処理材に対して耐性があるか調べる必要がある。さらに体外へ銅を排泄する際に水分の再吸収が行われることから、両種の水代謝に関しても同時に検討する必要がある。そこでアメリカカンザイシロアリとイエシロアリの銅をはじめとするミネラル類に対する味覚応答の違いおよび体外排泄に機能する消化・排泄組織の検討を行った。 イエシロアリの味覚感覚子の銅に対する電気生理応答実験を実施したところ、アメリカカンザイシロアリと同様、イエシロアリにおいても触角上の味覚感覚子から銅に対する味覚応答が得られることを発見した。さらにイエシロアリの方がアメリカカンザイシロアリと比較して応答閾値がかなり低いことが明らかとなった。 水代謝に関してはイエシロアリのアクアポリンの体内発現部位を検討した。イエシロアリ職蟻にはこれまで確認されているDRIPタイプアクアポリン以外に、PRIP様タンパク質が存在することが示唆された。さらにPRIP様タンパク質は中腸前方で発現していることが明らかとなった。また、階級が異なる兵蟻の中腸においては、PRIP様タンパク質の発現が確認されなかった。一般に昆虫中腸は消化・吸収の中心となる組織であり、上皮細胞の活発なターンオーバーが考えられている。以上のことから中腸で活発に発現するPRIP様タンパク質が、中腸に特異的な機能に何らかの寄与を行っていると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたシロアリ体液の浸透圧測定に関しては、研究室所有の光学顕微鏡下で試行を続けてきたが、作動距離が短すぎてマニピュレータの動作性が悪く測定が難航した。その他の予定していた研究は計画通りに進捗し、研究成果として論文・学会発表等着実に出ていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述のシロアリ体液の浸透圧測定に関しては、次年度、顕微鏡システムをCCDマイクロスコープに変更するなどして作動距離、マニピュレータの操作性といった問題を早急に解決して実施予定である。 また、イエシロアリで塩化銅の味覚電気生理実験を実施したところ、応答のベースとして通常用いる10mMNaClに対する応答が顕著に確認されたことから、当初の研究計画にはなかったが、両種におけるミネラルだけでなく’水’に対する応答の違いについても明らかにするため実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
電気生理実験の実施が遅れ、Windows7動作環境に対応するソフトウエアの更新手続きが遅れた。受理論文のカラー掲載費について発行元の手続きに時間を要することから、このための経費を繰り越した。抗体作製、DNA合成、シークエンスについては実施種類数が当初の予想よりも多くなり、時間的にも次年度に回すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由から、次年度使用額に関しては電気生理用ソフトウエアの更新、抗体作製、DNA合成、シークエンス、論文別刷代ならびに、分析精度を高めるため引き続き使用する計画としたICPMSのメンテナンスに充てる予定である。
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