本研究では、シロアリのミネラル・水利用メカニズムの特徴を解明することを目的とした。 アメリカカンザイシロアリとイエシロアリの銅塩に対する味覚応答を比較するため、触角上の感覚子のうち各種刺激液に反応する感覚子をチップレコーディング法により選定し、2種のシロアリのミネラルに対する応答閾値等を調べた。 アメリカカンザイシロアリでは、触角各節前方に普遍的に存在する感覚子では、各種刺激液のベースである10mM NaClには反応しないが、CuCl2に反応した。一方、イエシロアリでは同様の位置に存在する感覚子が10mM NaCl自体に反応し、またCuCl2にも反応することが明らかとなった。このことから、イエシロアリがアメリカカンザイシロアリよりもNaClに対して鋭敏に反応することが示唆された。 代謝生理に関して、シロアリでこれまでにクローニングしたCfDRIP以外に、シロアリの消化・排泄系で発現するアクアポリンの存否を明らかにすることを目的に、遺伝子およびタンパク質レベルの解析を実施した。公共の塩基配列データベースにある遺伝子情報をもとにin silicoクローニングを行い、これまでにクローニングしたものと異なるタイプのアクアポリン(CfPRIP_like)の推定配列を獲得した。現在、得られた塩基配列情報を用い遺伝子特異的プライマーを作製し、RT-PCR法によるCfPRIPの全鎖長の配列解析を行っている。また、抗カイコPRIP抗体を用いたウエスタンプロット解析よりCfPRIP_likeは職蟻の中腸に発現することが示唆され、セロトニン処理により発現調節できる可能性が推察された。また、アメリカカンザイシロアリでは、抗カイコGLP抗体を用いた蛍光免疫染色により、直腸管腔(消化管内容物)側で組織形態に基づいた局所的なアクアグリセロポリン様タンパク質の分布が推察された。
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