研究課題/領域番号 |
25292109
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
安部 久 独立行政法人森林総合研究所, 木材特性研究領域, 主任研究員 (80343812)
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研究分担者 |
渡邊 宇外 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (70337707)
渡辺 憲 独立行政法人森林総合研究所, 加工技術研究領域, 研究員 (90582734)
石川 敦子 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, チーム長 (00353574)
和田 浩 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究室長 (60332136)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 木彫像 / 樹種識別 / DNA / NIR / VOC / 顕微鏡 |
研究概要 |
森林総合研究所および京都大学生存圏研究所の木材標本庫に所蔵されている伐採後の経過年数が異なるスギ材標本,及び,森林総合研究所千代田試験地において伐採後すぐに冷凍保存した木材を試料として,リアルタイムPCR法によって,木材中に残存している葉緑体のrbcL領域のDNAのコピー数を辺・心材別に分析した。DNAの増幅領域の長さを,93bp,185bp,317bpに設定し,それぞれ増幅の可否,コピー数について解析した。その結果,伐採後44年以上経過した材では,317bpの長さの領域は増幅されなかった。185np以下の長さの領域はすべての試料の辺材で増幅されたほか,93bpの領域ではすべての材でDNAの増幅が確認された。辺材では伐採後の経過年数が長くなるとDNAのコピー数が少なくなる傾向が見られたが,心材では残存するDNAのコピー数の試料によるばらつきが大きく,一定の傾向は見られなかった。また,DNA抽出液に含まれるDNAの濃度と残存するコピー数との間には関係があるとはいえなかった。DNA分析を木材の樹種識別に用いる場合,木材中に残存するDNAの量よりも残存するDNAの長さが重要になると考えられ,分析する領域を200bp以下にすると伐採後数百年以上経過した木材でもDNAによる分析が可能であると考えられた。これらの実験と平行して,静岡県河津町南禅寺および長野県長野市正覚院に保管されている木彫像及び木彫像の一部と思われる木材の調査を行い,36体の木材片から近赤外線吸収スペクトルを収集した。また,非破壊での木材の樹種識別であるVOC分析方法を確立するため,木彫像の調査時にVOCの収集も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的な研究の目的は,国宝レベルの木彫像の樹種を近赤外分光分析法,VOC分析方法を応用して非破壊的に識別する技術を確立すること,また,わずかに得られる木材片から顕微手法とDNA分析を用いた,さらに細かな種レベルで樹種を特定する技術を確立することである。さらにそれら各手法の識別精度を向上させ,製作後千年近く経過した木彫像の樹種同定を実現することである。H25年度は,寺社等に保管されている木彫像の調査を実施するとともに,非破壊測定法である近赤外分光分析法とVOCのデータを取得し,データの有効性を検証した。また,木材中のDNAを用いた樹種識別に最適な条件を解析するため,木材中に残存するDNAの量と質について定量的な解析を行った。これは当初の計画通りで有り,1年目の計画をほぼ達成している。データの詳細な分析についてはH26年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
寺社等による木彫像の調査によって,データを積み重ねるとともに,近赤外分光分析法およびVOC法による非破壊的な分析方法によって,製作後数百年以上経過した木彫像の樹種の識別がどの程度まで可能なのかを明らかにする。一方,DNA分析による古材の樹種識別についても分析のための最適な条件を見いだし,応用の可能性も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属研究機関の耐震工事等で施設の利用が制限され,一部の実験が実施できなかったため。 実施できなかった実験について,次年度に計画に上乗せして実施する。
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