研究課題/領域番号 |
25292110
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
黒田 克史 独立行政法人森林総合研究所, 木材特性研究領域, 主任研究員 (90399379)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 柔細胞 / スギ / ミネラル / クライオ / SEM / EDX |
研究概要 |
樹木木部柔細胞は木部を構成する細胞のおよそ1~2割を占め、数年から十数年にわたり生活細胞として生存する特徴を持つ。木部柔細胞の機能の一つとしてミネラルの選択的輸送が考えられているが、その直接的証拠は得られていない。本研究では、木部柔細胞におけるミネラル輸送の実態を直接的に明らかにすることを目的とする。 本年度は、凍結試料を用いてミネラルを直接的に解析する手法を開発することを目的とした。そのために、既設のクライオSEMをもとにLA化システムへ変更した。この変更により、凍結状態の試料について、EDXによる元素分析が可能であることを確認できた。ただし、微量元素のマッピングについては成功しておらず、試料の調整方法など次年度での検討が必要である。 次に、樹木へのミネラルの注入方法の検討を行った。試料として、(独)森林総合研究所千代田試験地に植栽された7年生のスギクローンのうち、心材が形成されているクローンを選定した。塩化ルビジウムおよび塩化セシウム溶液を用意し、高さ1m付近の辺材外層あるいは内樹皮に達する小穴を開け直ちに溶液を注入した。1週間後に、立木の注入部付近を液体窒素で凍結させた後に伐採し、冷凍庫で保存した。注入部付近を凍結乾燥させて、含まれるミネラル濃度をICP-MSで測定したところ、注入したルビジウムとセシウムが確認できた。さらに、樹齢およそ20年で心材が発達したスギを用いて同様の処理を行った。この試料でも注入したルビジウムとセシウムが確認できた。このことから、樹齢や心材率にかかわらず注入できることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画書に記載した通り、研究所建物の耐震工事の影響でクライオSEM/EDXの導入が12月末であった。導入後、主要なミネラルのマッピングが可能であることを確認できており、おおむね順調に進展している。 ミネラル注入方法の検討については、7年生およびおよそ20年生で心材の形成程度が異なるスギ個体数本を用いて行った。予備実験を繰り返した結果、最終的にミネラルの注入に成功した。このことからおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
条件を変えてミネラルを注入したスギ立木から立木凍結法により試料を採取する。ICP-MS等を用いて採取した試料の成分の定量解析を行う。また、注入実験を行った試料を用いて、クライオSEM/EDXの解析条件の高度化を行う。とくに、微量元素のマッピングについて装置の最適条件の検討を行い、ミネラルを注入し凍結した樹木細胞のクライオSEM/EDX解析の条件の最適化を行う。 スギクローン数本を用いてミネラル注入実験を行い、注入後1日、1週間、1か月、半年後を目処に注入部を含む木部を立木凍結法により採取する。試料はクライオSEM/EDXによる局在解析とICP-MS等による成分の定量解析を行い、ミネラルの局在を調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
装置導入が遅れたため、試料採取回数が予定より少なくなったため。 ドライアイス等の研究用ガス類の購入。
|