研究課題/領域番号 |
25292115
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
山田 秀秋 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所亜熱帯研究センター, グループ長 (10372012)
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研究分担者 |
河村 知彦 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (30323629)
中村 洋平 高知大学, 黒潮圏科学部門, 准教授 (60530483)
今 孝悦 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40626868)
早川 淳 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (10706427)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 亜熱帯藻場 / 複合生態系 / 食物網構造 / 安定同位体 |
研究概要 |
1.石垣島名蔵湾に位置する海草群落において、植生および動物相の調査を3か月ごとに4回実施した。調査においては、調査地の海草群落において混生する海草類4種・海藻類6種を対象として、植物種ごとに葉上動物の組成を詳細に調査した。その結果、植物種間で葉上動物の組成が異なることや、潮間帯と潮下帯の地点間で葉上動物の個体数密度が異なる傾向にあることが明らかになった。また、植生構造と葉上動物・底生動物の個体数密度との関連性について、分析を行った。 2.海草群落に隣接する干潟域において、物理環境要因と底生動物の分布状況を調査すると共に、炭素・窒素安定同位体分析を行った。その結果、底生動物では甲殻類、腹足類および多毛類が優占し、それらの食物源には底生微細藻類の寄与が高い事が判明した。一方で、干潟域の堆積有機物に多くのマングローブ由来成分が含まれる事も判明し、それらを利用する動物も存在した。すなわち、干潟域では自生的資源の重要性が高いものの、系外資源の役割も見積もる必要があることが示唆された。 3.低次生産構造に重大な影響を及ぼすと考えられるブダイ類(植食性魚類)を対象に、PCR-RFLP法による種判別法の作成を行った。その結果、2回~5回の実験を組み合わせることで全ての種の判別が可能になることが分かった。次に、沖縄県石垣島と沖縄本島の海草藻場で採集されたブダイ類稚魚224個体を対象に解析したところ、オウムブダイ、ハゲブダイ、ヒブダイ、スジブダイ、オビブダイ、ダイダイブダイ、レモンブダイの7種が確認された。 4.藻場干潟域に生息するヒメクワノミカニモリ(小型巻貝)は、同所的に出現するソデカラッパおよびハリセンボンによって捕食されることを室内飼育条件下で確認した。両種による被食率は隠れ家の存在によって有意に低下したことから、地形や捕食者の分布が巻貝類の分布様式に影響を及ぼしていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はデータ収集に専念する計画であり、順調にデータが得られた。 亜熱帯性藻場・干潟域における群集構造の概要を把握することができたほか、一部の生物については、炭素・窒素安定同位体分析や室内飼育実験を実施した。さらに、形態学的種同定が困難なブダイ類について、種判別法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
海草藻場域における生物群集の構造等には顕著な季節変化が認められたため、今後も採集調査を継続する。また、炭素・窒素安定同位体分析により、マングローブ域の重要性も示唆された。このため、今後はマングローブ域にも調査区域を拡大することで、藻場・干潟複合生態系のみならず、系外からのインパクトも見積もることとする。これにより複合生態系の更なる理解が進むことが期待される。 琉球列島の海草藻場に出現するブダイ類稚魚の種組成が明らかとなった。しかし、8-9月に採集した個体のみを解析したため、次年度は他の季節の個体についても調べることで種組成の季節的変化を明らかにする必要がある。また、海草藻場以外のガラモ場などに出現するブダイ類稚魚についても解析・比較することで、ブダイ類稚魚に対する海草藻場の成育場としての重要性を明らかにする予定である。 未記載種とみられる動物が複数種出現しているため、公表に向けて精査を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の異動によって26年度の調査人員を増やす必要が予想されたため、25年度の使用予定額を節約した。 26年度は当初計画よりも調査人員を増やす必要があるため、人件費・旅費等に充てる。
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