研究課題/領域番号 |
25292116
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
四ツ倉 典滋 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60312344)
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研究分担者 |
黒川 孝幸 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 准教授 (40451439)
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (50301875)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コンブ / バイオフレーバー / 種苗 / 環境適応株 |
研究実績の概要 |
環境適応株の作出:北海道沿岸のコンブについて、“マコンブグループ:Saccharina japonicaの4変種”と“ミツイシコンブグループ:ミツイシコンブとナガコンブ”について水温別、および栄養塩濃度別の培養を継続した。各グループにつき自殖と交配による“170通り”と“75通り”の組み合わせのなかで、22.5℃と25.0℃の条件下では何れも配偶体の成熟は認められなかった。しかしながら、20.0℃を上限とする高水温条件下や、栄養強化海水(PES)をもとに窒素濃度とリン濃度をそれぞれ0倍量あるいは1/4倍量に調整した貧栄養条件下においても配偶体の成熟や受精が確認され、幼胞子体を得ることができた。その後、7か月間で30通りの組み合わせで得られた胞子体を子嚢班形成に向けて関係機関の大型水槽で培養を行うことができた。その結果、3か月の間に17.5℃を上限とする高水温条件下や、上記1/4倍量の貧栄養条件下で育てた6通りの組み合わせで育てた胞子体から遊走子を単離することができ、形態培養を継続している。また、忍路産のS. japonica var. religiosa遊走子由来の配偶体から雌の単為発生体、および雄の無配生殖体を作出し、大型水槽による培養を継続している。 芳香成分担持用基材の開発・種苗着生媒体の開発:天然コンブに含まれる11種類の揮発成化合物:n-Hexanal、(E)-2-Hexenal、1-Octen-3-one、(E)-2-Octenal、1-Octen-3-ol、(E, E)-2, 4-Heptadienal、(E)-2-Nonenal、(E, Z)-2、 6-Nonadienal、(E)-2-Nonen-1-ol、(E, E)-2, 4-Dodecadienal、tridecanal、を含ませたアルギン酸ナトリウムゲルを用いて水槽内でウニの行動実験を行った。その結果、複数回行った何れの実験においても天然藻体の10倍量の化合物を含ませたゲルで著しいウニの集塊が認められた。また、セルロース溶液を用いた種苗の培養実験を通して、高粘性ポリマーのコンブ種苗担持物質としての有効性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
屋内培養株(胞子体)の成熟誘導には相当な時間を要するが、関連研究機関の屋内水槽を活用することにより計画に則って実施するよりも効率的に環境適応株の成熟体を得ることができた。また、芳香成分担持用基材の開発や種苗着生媒体の開発においては、前年度に得られた知見と合わせて次年度に行う種苗のフィールド展開に向けての基礎的な知見が得られた。また、昨年度、研究の推進方策として記した外国人協力者との連携も綿密に果たすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
環境適応株の作出について、高水温条件や貧栄養条件で培養した株の成熟には時間を要し、また培養株の数も相当数に上ることが予想されるが、引き続き雇用する実験補助員や関連研究機関のサポートのもとで計画的・効率的に研究を推進する。芳香成分担持用基材のフィールド展開については海藻の持つ揮発性成分について豊富な知見を有するBoonprab Kangsadan博士(外国人協力者)と、種苗のフィールド展開については地域の海洋環境に詳しい漁業関係者と綿密に連携を取りながら効率よく実験が進められるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に向けた外国人協力者との研究打ち合わせについて、研究者を招聘することなく、国際学会の際に果たすことができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
培養研究におけるサンプル数が相当数に上がることから、観察補助や換水補助を行うための補助員の雇用費に充てる。また、外国人協力者との連携に関わる費用に充てる予定である。
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