研究課題/領域番号 |
25292119
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
北村 真一 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (40448379)
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研究分担者 |
広瀬 裕一 琉球大学, 理学部, 教授 (30241772)
山田 力志 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10551020)
仲山 慶 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (80380286)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マボヤ / 寄生虫 / 鞭毛虫 |
研究概要 |
マボヤ被嚢軟化症は同養殖に大きな被害を与えている.申請者らの研究で,本症はAzumiobodo hoyamushiと呼ばれる鞭毛虫によって起こることが明らかとなった.これまでに,被嚢の軟化メカニズムに関する知見はないが,予備実験から本虫のプロテアーゼがマボヤの被嚢セルロースを架橋する未知タンパク質を分解することで,軟化症が起こると考えられた.そこで本課題では,軟化メカニズムを解明するために,本虫のプロテアーゼを検出し,それらの組換え酵素と被嚢切片を用いて,in vitroで軟化症を再現する.さらに,病マボヤの被嚢のプロテオーム解析を行い,どのような過程で軟化が起こるのかをタンパク質レベルで明らかにする.最終的には,被嚢セルロースを架橋する未知タンパク質を同定し,病原体と宿主の双方の観点から,被嚢の軟化メカニズムを解明する. 昨年度の成果として,A. hoyamushiが細胞外プロテアーゼを産生することを明らかにした.すなわち, 7種の人工基質(アミノペプチダーゼ型1種,トリプシン型2種,キモトリプシン型2種およびエラスターゼ型2種)を用いて,本虫の細胞外プロテアーゼの検出を行ったところ,アミノペプチダーゼ型,トリプシン型およびキモトリプシン型のプロテアーゼが,それぞれ1種,2種および1種検出された.これらの中でも,トリプシン型プロテアーゼの活性が高いことが明らかにされた.一方,エラスターゼ型のプロテアーゼは検出されなかった. 次に,被嚢軟化が起こるメカニズムを解明するために感染個体の被嚢のプロテオーム解析を行った.その結果,発症個体特異的に減少するタンパク質として,筋原線維安定化タンパク質や2種のアクチンなどが検出された.今後は,これらのタンパク質を人工的に合成し,前述のプロテアーゼによる分解実験および被嚢中での局在を明らかにしていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していた実験を大きく分けると,①感染実験②感染マボヤの被嚢のプロテオーム解析③原因鞭毛虫Azumiobodo hoyamushiからの細胞外プロテアーゼの検出であった.これらの実験は次年度に持ち越すことなく,その全てを支障なく遂行した. 平成25年度の業績としては,既に本課題に関する論文一報が魚病関係の国際誌に受理された.また,国際学会で1度の発表を行った.このように,業績からも本課題が順調に進められていることが伺える.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,宿主であるマボヤ側からの研究として,前年度のプロテオーム解析の結果に基づき,軟化症発生時に減少するタンパク質3つを大量発現する.大量発現系は,研究代表者が所属する愛媛大学の愛媛プロテオ科学アカデミーを活用する.発現したタンパク質は,病原鞭毛虫A. hoyamushiの培養上清から得られる細胞外プロテアーゼを用いて,分解実験を試みる予定である.既に,プロテアーゼ濃縮法は予備検討済みである. 一方,病原体側からは,次世代シーケンサーを活用し,本虫のexpressed sequence tags (ESTs)を行いプロテアーゼ遺伝子を探索する.ビッグデータの解析法については,分担者の仲山慶講師が既に着手している.得られた遺伝子情報から,リアルタイムPCRで,軟化症発症時に多く発現するプロテアーゼ遺伝子を探索し,軟化に関わるプロテアーゼの特定を試みる. 以上の方策は年度末の会議で,担当者全員による議論が行われ,コンセンサスが得られている.
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次年度の研究費の使用計画 |
マボヤ被嚢軟化症に関わる病原体のプロテアーゼを特定するために,原因虫のexpressed sequence tags(ESTs)解析を次世代シーケンサーで行ったが,試薬を乗り合いで使用したために,繰越金が生じた. 次世代シーケンサーを用いたESTs解析は,回数をこなすほどより多くの遺伝子が特定できる.さらに解読する遺伝子数を増やすために,繰越金により,もう一度,同解析を行う予定にしている.
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