研究課題/領域番号 |
25292128
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
香川 浩彦 宮崎大学, 農学部, 教授 (60169381)
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研究分担者 |
内田 勝久 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50360508)
中村 將 名桜大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10101734)
小林 亨 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (30221972)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サメ類 / 生殖生理 / 次世代シーケンサー / 視床下部 / 脳下垂体 / 生殖線 / 性分化 / 卵殻腺 |
研究実績の概要 |
サメの繁殖保護を図るために、サメ独特の性分化機構及び卵子形成の分子制御機構を明らかにすることを目的として、昨年度は、トラザメの性分化過程を明らかにした。また、次世代シーケンサーを用いてトラザメの生殖機構に係わる候補遺伝子(GnRH、バソトシン、GH、GTHなど)及び卵殻形成に係わる候補遺伝子(コラーゲン、コラーゲン合成酵素など)が見いだされた。今年度は、性分化制御機構を明らかにすることや次世代シーケンサーの解析から得られた候補遺伝子の生理機能を明らかにすることを目的に研究を行った。その結果、アカエイ胎児の性分化過程の組織学的観察を行なった。卵巣は未分化なエピゴナル器官の上皮のみに分布して発達したのに対して、精巣はエピゴナル器官組織中へと浸潤した。しかし、芳香化酵素の抗体を用いて免疫染色を試みたが明確な反応を示す細胞は卵巣、精巣共に認められなかった。トラザメの下垂体腹葉より、糖タンパク質ホルモン(GPH)α鎖ならびに3種類のGPHβ鎖(FSHβ、LHβ、TSHβ)をコードする遺伝子構造の全配列を同定した。原始的な顎口類である軟骨魚類でのTSH分子の同定は初めてである。卵殻腺は4つの層から形成され、そのうち、buffle zoneと呼ばれる層が卵殻形成に重要な働きを行っていることやコラーゲンやコラーゲン合成酵素及びケラチンの遺伝子が卵殻腺で発現していることが明らかとなった。さらに、ステロイド代謝酵素遺伝子の組織特異発現解析から、Cyp19a1の発現は卵巣でその発現がみられたが、精巣(精母細胞リッチ領域、精子リッチ領域)ではみられなかった。エピゴナル器官では卵巣での発現比べると弱いがその発現が認められた。一方、3beta-hsdの発現は、上述のすべての組織で発現がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、予定通り、性分化に関するホルモン制御機構の解析と次世代シーケンサーの解析から得られた候補遺伝子の解析及び生殖線のステロイドホルモン転換酵素の遺伝子解析を行うことができ、ほぼ予定通り計画が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
性分化に関する研究では、性分化に関わる性ホルモンの影響を明らかにする目的で、性分化に伴うステロイドホルモン代謝酵素の発現や性分化期のトラザメに性ホルモンを暴露して性分化への影響を調べる。また、トラザメの下垂体における3種類のGPH(FSH、LH、TSH)の機能を明らかにするため、それらの遺伝子発現量を定量する系を確立する。次に、成熟段階の違いや、性ステロイド投与による3種のGPH遺伝子の発現変動を捉える。さらに、3種の組換え型GPH分子の構築に着手し、それらの生殖腺や甲状腺に対する直接的な機能解析へと繋げたい。また、卵殻形成機構を明らかにすることを目的に、卵殻形成遺伝子(コラーゲンやコラーゲン合成酵素など)の発現動態やそれらにステロイドホルモンが与える影響について明らかにする。また、、性ステロイドホルモン合成に関してステロイド代謝実験を行うとともに、ステロイド代謝酵素の発現に関して、特に精巣、エピゴナル器官でその詳細を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
卵殻腺における遺伝子解析の一部を行わなかったことやサンプリングのための出張の回数が減ったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
計画していた卵殻腺における遺伝子解析及びサンプリングのための出張や学会報告に使用する。
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