研究課題/領域番号 |
25292136
|
研究機関 | 学習院女子大学 |
研究代表者 |
荘林 幹太郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (10460122)
|
研究分担者 |
小田切 徳美 明治大学, 農学部, 教授 (10201998)
神井 弘之 政策研究大学院大学, その他の研究科, その他 (50649407)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 政策システム主体 / 政策フォーラム / 政策概念共有化 |
研究実績の概要 |
農政システムの研究枠組みに沿った形態での政策項目別の主要アクターに対するインタビューを継続し、それぞれの政策分野におけるメタ政策システムとの関係性およびその時系列的な構造変化等を明らかにする作業を継続した。具体的には、普及政策、農業環境政策を中心に、それぞれの政策に関する主要アクターに対するインタビューを実施した。 また、農政システムについての定量的分析の一環として主要な政策概念についての政策システムの主要アクターによる共有過程分析を行った。具体的には「多面的機能」、「環境支払い」等の政策概念について、農政システム上の主要フォーラムである白書、主要日刊紙、アカデミックジャーナル等での出現頻度時系列分析を行った。その結果、「多面的機能」については新基本法の制定前後では白書の出現頻度に対して一定の「時差」をもって出現していた日刊紙での出現が、その後は白書での出現とは関係なく漸減する傾向を見せることを明らかにし、行政がリードした政策概念が、他のアクターに共有されずにいることを確認した。 さらに、2015年4月に開催された全米地理学会における農業環境政策セッション等で農業環境政策に関する農政システムの観点からの分析を発表し、参加者から政策システムの観点からのアプローチに対して有益なコメントを得た。また、政策概念のアクター間の共有過程分析については英国ケンブリッジ大学教授等のチームと共同し、欧州における主要政策概念の共有経過を同様の手法で分析する必要性を確認した。その際、共有過程をいくつかに分類する作業仮説の設定(「行政リード・拡散型」など)の必要性もあわせて確認された。さらに、2015年7月には欧州委員会農業局の農村振興政策担当課長を招聘し、農林水産省の政策立案担当者、研究者等からなる農政システムについてのワークショップを、農村振興政策・農業環境政策を対象に開催した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
土地改良政策、普及政策、農業環境政策に関する主要アクターに関するインタビューを行った結果、アクター間の関係性についてより明らかにできる政策事例を選定することの重要性が明らかになった。そこで、滋賀県が国に先駆けて実施した環境支払い政策を対象に追加することとしたが、年度内にそれを実施することができなかった。 ケンブリッジ大学の研究協力者と共同で実施する予定であった欧州における主要政策概念の拡散過程分析についても欧州のテロ事件等の影響や研究代表者の私的事情(入試の責任者及び母親の介護)もあり、その作業が遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き農政システムの研究枠組みに沿った形態での政策項目別の主要アクターに対するインタビューの一環として、滋賀県環境支払政策に関する主要アクターに対するインタビューを継続する。これまでの研究成果を踏まえて、アクター間の関係性に焦点をあてたインタビューを行うことにより、アクター相互の影響の関係性を定量的に明らかにする(4月~7月)。同様の趣旨で、「デカップリング」政策についてもアクター間の相互作用を分析するため、中心的フォーラムであったOECDの関係者にインタビューを行う(9月~10月)。 主要政策概念の主要アクター間での共有過程分析については、「多面的機能」、「環境支払い」に加えて「食料安全保障」などにも対象を広げ、前年度に構築した類型(「行政リード・拡散型」、「アカデミック主導型」、「国際機関主導型」、「農政システム外拡散型」)に該当する分析を行う(4月~9月)。同様の作業を欧州においても海外研究協力者(ケンブリッジ大学ホッジ教授)を中心に実施する。それらを踏まえて、主要政策概念の共有過程の国際比較を行うことにより、類型の妥当性ならびに本手法の農政システム研究における定量分析としての妥当性を検証する(6月~12月)。以上を踏まえて、英文の査読付きジャーナルへの投稿を目指すこととする。
|