研究課題/領域番号 |
25292138
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
中川 光弘 茨城大学, 農学部, 教授 (30302334)
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研究分担者 |
立川 雅司 茨城大学, 農学部, 教授 (40356324)
内田 晋 茨城大学, 農学部, 准教授 (30631014)
鈴木 充夫 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (30206536)
上岡 美保 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (90339094)
川手 督也 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80355263)
鈴木 義人 茨城大学, 農学部, 教授 (90222067)
佐藤 達雄 茨城大学, 農学部, 准教授 (20451669)
御影 雅幸 東京農業大学, 農学部, 教授 (50115193)
高橋 京子 大阪大学, 総合学術博物館, 准教授 (00140400)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医食農連携 / 地域活性化 / 食養生 / 健康長寿 / 機能性薬用農産物 |
研究実績の概要 |
機能性薬用農産物の需給関係のデータベースの構築を進めた。アジア市場の動向については中国を中心に需給関係のデータベースの構築を進めた。このデータを使った分析により、我が国の生薬供給の9割近くを依存している中国で経済発展と食養生の見直しの機運を反映して機能性薬用農産物の需給が逼迫化傾向を示していることを確認した。漢方薬で最も使用される甘草の中国からの輸出価格は、この15年間で4培以上上昇している。中国政府は国内での生薬生産の振興を図っており、作付面積が増加しているが、生薬生産は主に条件が不利な限界地で貧困対策も兼ねて行われている場合が多く、生産振興対策に関連する部局も多岐にわたり体系的な生産振興政策が確立していないことを明らかにした。 園芸モデルの開発に関しては、国内での安定的供給が課題となっている甘草と麻黄について栽培実験を行った。甘草については、塩ビ管を活用した栽培によって、真直ぐな根の伸長が可能となり、除草作業、収穫作業も容易になること、我が国の気象条件への適応も高く、特に夏の高温への抵抗性が高いことを確認した。ただし、日本薬局方で定められたグリチルリチン酸含有率2.5%の品質条件を満たすためには栽培方法、品種選抜の工夫が必要であることを確認した。 食と健康に関しては、栄養、医療、社会経済のデータベースの構築を進めた。このデータを使った分析により、我が国男性の平均寿命に影響を及ぼす要因として野菜摂取量、所得、癌死亡率、脳卒中死亡率があることを確認した。死因の第一位である癌死亡率に影響を及ぼす要因としては、喫煙率、食塩摂取量、野菜摂取量があることを統計学的に明らかにした。医食農連携による食生活の改善は、生活習慣病予防を通じて健康長寿化を促進し、かなりの医療費削減効果を持つとともに地域経済の活性化にも貢献する可能性があること、そのための制度整備が必要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能性薬用農産物の需給関係のデータベース構築が順調に進み、このデータを使った分析も可能となった。ただ、機能性薬用農産物は我が国でも中国でも農業部門ではマイナークロップと位置付けられており、統計整備が遅れているものが多いことも明らかになった。 我が国の生薬供給の9割近くを依存している中国の生薬需給の実態についてもかなり明らかになってきた。中国での生薬生産振興対策の分析は、これもでほとんど研究蓄積のない分野である。 園芸モデルの開発に関しても、甘草を中心に栽培実験を通じて、その技術的、経営的、制度的課題がかなり明になってきた。国内での安定的供給の可能性があることを確認できたが、種苗供給体制の確立、使用農薬の特定化、流通体制の整備等、取り組むべき課題も多いことも明らかになってきた。 食と健康に関しても、我が国男性の平均寿命や癌死亡率の統計分析を通じて、食養生による生活習慣病予防効果が高いことが明らかになってきた。医療費削減効果も含めて医食農連携の経済効果がかなり見通せるようになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
機能性薬用農産物の需給関連データベースの構築を完成させる。このデータを使って、需給動向を分析するとともに、今後我が国で安定的な国内生産を必要とする機能性農産物の特定化とその市場環境を検討する。 甘草と麻黄を事例に、国内での安定的供給の課題を析出し、それを克服するための技術的、経営的、制度的対策を明らかにする。 栄養、健康、医療、社会経済関連のデータベース構築を完成させる。これを使って医食農連携の健康増進効果、医療費削減効果、産業連関効果を分析する。 これらの分析結果を踏まえて、今後我が国で医食農連携をさらに推進していくための制度設計の方向性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内研究を中心に研究を進めたため、当初予定していた海外調査を十分行うことが出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
海外調査の課題を選定して、十分な海外調査を実施する計画である。
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