研究課題/領域番号 |
25292142
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
長束 勇 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (90379694)
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研究分担者 |
石井 将幸 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (50293965)
森 丈久 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (10502841)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水路トンネル / 補強効果 / 載荷試験 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
(長束)躯体の圧縮強度の影響については,グリッド補強により,最大荷重は2.0~2.5倍に向上し,残留耐荷倍率は1.3~1.4倍と概ね等しい効果が得られた.ひび割れの影響については,グリッド補強により最大荷重は3.7倍,残留耐荷倍率は1.7倍となり,トンネル躯体にひび割れが存在していても,グリッド補強は効果を発揮し,脆性的な破壊を防ぐことができる.付着強度の影響については,ほとんどの補強供試体が補強部材の剥離と同時に破壊に至ったことから,グリッド補強の効果には補強部材の付着強度が大きく関係していると考えられる. (森)一般的なPCMと繊維補強セメントをそれぞれ補強材とした供試体を用いて曲げ試験を行ったところ,両補強材とも付着力が強く,補強材が母材から剥離する前に母材側で破壊するという結果となった.AE計測の結果から補強材部分にAEの発生が見られ,補強材にも微小破壊が生じていることが確認された.また,デジタル画像相関法により画像解析した結果得られた供試体のひずみ分布から,補強材と母材の付着界面付近におけるひずみの集中が確認された.このことから,補強材が母材から剥離する可能性が示唆された. (石井)躯体と補強材の付着強度を考慮した解析をフレーム解析で実施する方法についてさまざまな検討を行った.フレーム解析ソフトの中には剥離を表現する機能を備えているものがあり,付着面法線方向と接線方向のそれぞれに対して個別の付着性状を設定することができる.しかしそれらは剥離を表現することができても,剥離後の変形によって躯体と補強材が接触,干渉する状況を考慮することができない.橋桁にグリッド補強を行う場合など,部材外面を補強する場合の解析ではあまり問題にならないが,中空部分を補強するトンネル補強では,特に剛性の高い補強材を用いる場合において,これが重大な障害になり得ることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(長束)FRP格子筋を用いたPCM工法やHPHRCC工法は,補強された部材の破壊モードが補強部の剥離となるという課題が明らかになった.そこで,これらの課題を解決することができる可能性が高い耐アルカリガラス繊維ネット(ARGネット)伏せ込み工法の検討を開始した. (森)PCM系材料で補強した供試体の曲げ試験を行った結果,補強材の剥離につながると想定される,付着界面付近でのひずみの集中が明らかとなった. (石井)一般の設計業務に広く用いられているフレーム解析で,トンネル内面に施工した補強材の剥離を表現するうえでの問題点を絞り込むことができた.
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今後の研究の推進方策 |
(長束)ARGネットの強度調整は容易であることから,その強度を変化させた補強を検討し,これまでのFRP格子筋を用いたPCM工法やHPHRCC工法の試験結果を踏まえ,最適なトンネル内面補強手法の提案を行う. (森)ひずみゲージを用いて補強材と母材の付着界面付近におけるひずみを実測し解析することにより,補強材が剥離する際のメカニズムを明らかにする. (石井)フレーム解析で補強材の剥離を考慮し,また剥離後の挙動をおおむね適切に表現できるモデルを作成するとともに,その適用範囲を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
補強部材の剥離を考慮したトンネルの補強効果に関する解析を行うことができるソフトウェアについて調査した結果,市販のソフトウェアには適切なものがないことが判明した.そこで現在保有しているソフトウェアを用い,様々な工夫を行うことによって,解析を実施することとした.これによりソフトウェアの購入を見送ったために,次年度使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
研究に一定の目処が立ちつつあることを受け,国際シンポジウムにて成果発表を行い,広く成果を周知するための費用として使用する計画である.
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