研究課題/領域番号 |
25292144
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
治多 伸介 愛媛大学, 農学部, 教授 (60218659)
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研究分担者 |
藤原 拓 高知大学, 自然科学系, 教授 (10314981)
黒田 久雄 茨城大学, 農学部, 教授 (20205256)
斎藤 広隆 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70447514)
久米 崇 愛媛大学, 農学部, 准教授 (80390714)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 集落排水 / 医薬品 / PPCPs / 水田 / 水質浄化 |
研究実績の概要 |
生活排水中の医薬品は,分解が不完全である場合には,その分解生成物にも毒性が残留したり,元の医薬品以上の毒性が発現する場合がある.そして,昨年度(H25年度)の研究(文献調査と室内実験)からは,実際に生態系および人体への毒性が危惧される重要分解生成物(約10種類)と,その元となる医薬品原体を選定した.そこで,本年度(H26年度)は,愛媛県と茨城県に存在する多様な処理方式の農業集落排水施設(8施設)と,愛媛県の処理水無希釈利用水田でサンプリングを実施し,その重要分解生成物と原体の存在実態を調査した.その結果,多くの農業集落排水施設の流入下水と処理水,および水田からの流出水(表面流出水)から,様々な重要分解生成物が検出された.具体的には,Carbamazepine(抗てんかん剤)の分解物「Carbamazepine10,11-epoxide,Acridine」,Bezafibrate,Clofibric acid (高脂血症用剤)の分解物「4-Chlorophenol,4-Chlorobenzoic acid」,Ketoprofen(解熱消炎鎮痛剤)の分解物「3-Acethylbenzophenone,3-Ethylbenzophenone」が1~100ng/Lオーダーで検出された.いずれの分解物も,集落排水施設では,流入下水に比較して処理水では濃度が低い傾向が見られたものの,成分によっては,処理水中の重要分解生成物が原体の濃度を上回る施設があった.一方,水田では,流入処理水よりも水田流出水で濃度が低下する成分と,逆に高まる成分があった.以上より,医薬品の分解生成物への対策の重要性が,実際の集落排水施設と処理水利用水田で明確になったとともに,その具体的対象となる成分を絞り込むことに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた,①実際の農業集落排水施設での実態調査,②処理水を無希釈利用した水田での実態調査,をいずれも実施し,当初目標としていた「農業集落排水施設と処理水利用水田での分解生成物の存在実態」と「その重要性」を明らかにすることができた.さらに,次年度の室内実験で,分解速度が速まる条件を検討するにあたって,特に対象とすべき重要分解生成物の絞り込みも行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
H26年度までは,おおむね順調に研究を進行させることができたため,H27年度についても,当初計画どおりの分担研究体制で研究を進めることを予定している.具体的には,土壌での分解実験は久米・斎藤が担当し,光分解試験は藤原が担当し,集落排水施設と処理水利用水田での調査は治多・黒田が担当する. ただし,現時点では,学会での口頭発表はあるものの,論文が投稿できていないため,投稿を迅速に実施する.また,H26年度には,農業集落排水施設の調査は,施設数は確保できたものの,年間を通じてのデータ採取が十分に行えていない.水田においても,調査回数が2回と少なかったため,よりデータを充実させる必要がある.そのため,H27年度は,当初予定していた室内実験に加えて,これらの作業も十分に実施する.集落排水施設と処理水利用水田の調査は,治多・黒田が担当する.
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次年度使用額が生じた理由 |
分解生成物の分析の定量下限を下げるとともに,精度を高める分析条件設定に,当初予定よりも時間を要してしまった.そのため,H26年度に予定していた農業集落排水施設における年間変動調査は不十分(回数不足)であり,また,水田での調査も同様となった.また,H25年度に実施予定であった微生物分解試験,土壌分解試験での嫌気状態と好気・嫌気繰り返し状態の実験も遅れており,そのために次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
実施の遅れている,①農業集落排水施設での年間変動調査,②水田の時期的変動調査,③微生物分解,土壌分解の嫌気条件と好気・嫌気繰り返し状態の実験,を確実に実施する.特に,微生物分解,土壌分解に関する実験を先ず早急に行い,予算を迅速に利用するとともに,効率的に作業を進行させる.
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