研究課題/領域番号 |
25292145
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
長 裕幸 佐賀大学, 農学部, 教授 (90136599)
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研究分担者 |
宮本 英揮 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10423584)
伊藤 祐二 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (60526911)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 土壌物理学 / 環境修復 / 塩害 / ライシメータ / 中国 / 黄河 / 中国科学院寒地乾燥地環境工学研究所 / 圃場 |
研究概要 |
本研究では,塩害農地の除塩として有効な手段であるファイトレメディエーション(植物修復)に対して,この現象を,植生のある土壌内における水分・塩分の同時移動としてとらえ,土壌物理学的にその効果に対するシミュレーションを行い,将来予測に結びつけることを目的としている。具体的には,除塩用植物として可能性が指摘されている幾つかの植物について温室内ライシメータにおける栽培実験を行い,土壌物理的に各植物の塩分吸収特性を解明するために,蒸散の解析に必要なFeddesモデルの根の吸収パラメータや根群の成長関数の決定を行うと共に,実際の塩害地である,中国甘粛省の乾燥地塩害圃場において,各植物の栽培実験を実施し,気象観測および土壌内水分・塩分の自動モニタリングを行うことによって,各植物の修復効果に対する検証を行い,シミュレーションの精度を明らかにし,将来予測を試みることである。 今年度は,まず、温室内ライシメータにおける塩水を用いた栽培実験を,ビートとトウモロコシについて実施し,溶質の各イオン成分に関する,両作物の植物体への吸収特性を解析した。その結果,特にNaとCaについてビートにおける吸収が卓越していることが明らかになった。両者における土壌水分の空間分布については差が無かったが,電気伝導度に関しては顕著な違いがあり,イオンの選択吸収性の違いも含めて,非常に興味深い結果が得られた。 次に,中国現地実験圃場においても,ビートとトウモロコシの両栽培区について土壌及び作物体の各イオン成分について解析を行った結果,作物体への吸収量については,室内実験と同じ傾向が見られた。土壌内空間分布については,トウモロコシにおいて,土壌表層に多くの集積が観測され,土壌面蒸発量の違いの影響によるものと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,室内ライシメータ試験と中国現地観測圃場において,同時に耐塩性作物の栽培と土壌内および作物吸収体のサンプリングによるイオンの分析,自動モニタリングによるTDRを用いた計測を行っており,非常に多くの労力と時間を要するものであった。特に海外において,塩害地農家に農地を借用し,固定した観測サイトを設置して,実際の栽培実験を行うといった作業を年間を通して行っており,国内圃場実験とは比較にならない困難さを伴っていることを考慮すれば,基本的にデータが取得できたことに関しては,完全ではないにしろ一応の評価はできると考える。
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今後の研究の推進方策 |
作物の栽培実験は1年に1回のサンプリングしかできないので,基本的に今年度も同様の実験を継続し,サンプリング数を増やす努力を行う。ビートに関しては除塩効果を確認できたので,さらに効果的な耐塩性作物を選択し、栽培実験を行っていく必要がある。今年度も,年間3~4回の渡航を行い,現地圃場でのサンプリングと自動モニタリングによる気象関連データ、TDRおよびTDTによるさらに質の高い空間的な土壌水分・塩分の経時的変動の計測を行う。 室内ライシメータ試験も引き続き栽培実験を行う。今年度はアイスプラントの露地栽培に挑戦し,定量的な除塩効果の計測と,栽培に伴う塩分の空間的な再配分の影響について測定を行うと同時に,シミュレーションによる実測値の再現を試みる。
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