研究課題/領域番号 |
25292147
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
黒田 清一郎 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所施設工学研究領域, 主任研究員 (30343768)
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研究分担者 |
佐藤 源之 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (40178778)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非破壊診断 / 電磁波探査 / 弾性波探査 / 貯水池 / 構造物維持管理 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、物理探査による構造物・基礎詳細調査の際に技術障壁となる送受信機配置の制約を克服するために 、地震波干渉法等のRedatuming(データ再構成)の概念に基づく、現実的かつ汎用的な計測条件の元で物性値の評価とその空間分布の可視化を行なう技術の開発を行なった。 研究開発にあたり、昨年度までに選定した現地実証試験地区において、構造物と基礎および接合部の相互作用の全体的な振動モードの評価のために常時微動、地震動観測等の基礎的な調査観測を行ってきたが、最終的な実証試験の高品質な基礎資料の収集のため、引き続きこれを発展的に継続した。これらの研究成果のうち基礎的な技術については特許登録されるとともに一報の論文として公表された。 電磁波および弾性波探査について、実際のダム現場において現地調査を実施するとともに、それを参考にして室内実験においても提案手法の検証を行えるよう模型の整備を行なった。これらの数値実験および室内実験の結果をもとに、提案手法を現地適用する際に必要となる計測装置および解析技術の基本的な設計を行い最終年度における野外実証試験の計画を立案した。 分担者である東北大学東北アジア研究センター教授佐藤源之研究室においては、昨年度より検討を行ってきた 国内外の現地試験地において土壌の電磁気物性に関する基礎的な調査を行うとともに、電磁波干渉法を現地で実現するための光電解センサを中心としたボアホール内同時計測センサの設計試作を行うとともにその性能の基礎的な試験を行った。 提案する手法の理論および基礎的な実験成果については、国際学会(米国地球物理学連合)も含めた国内外における学会において発表を行うとともに、スタンフォード大の研究協力者らと論文執筆に向けた打ち合わせを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は弾性波および電磁波を用いた物理探査について、構造物および基礎の診断に適した高分解能・高感度の技術を開発するために、計測システムおよび解析技術の開発を行なうとともに、室内・施設内実験および現地適用試験を行なうものである。 本年度は研究分担者の東北大学を中心に計測システムの開発と基本性能の把握を行なうとともに、数値実験とその解析を行なうコードの作成を行なった。また実際の貯水池堤体の現地適用試験地において、電磁波探査、弾性波探査の適用を開始するとともに、開発手法の検証を行なうための室内実験模型および装置の作製を行なった。 以上のように研究内容全てにおいて、当初予定通りの進捗をみることができた。 また一部成果については米国地球物理学連合(American Goephysical Union)において発表するとともに、今後の本課題の研究推 進について国内外の研究協力者と協議することができた。 以上のように、本年度内に予定していた現地調査、野外試験、室内実験等について、課題提案当初の計画内容に基づき順調に実施することができたこと、またその研究内容について特許登録および論文公表含めて一定の成果を公表することができたことから、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで基礎的な諸元に関する調査を行ってきた現地試験地について、電磁波探査、弾性波探査の現地適用を実施するとともに、構物・地盤およびその接合部の強度や透水性に関わる物性値分布との比較検討を行うことにより妥当性の検証を行なう。また農工研内の実験施設において現地での試験を想定して、実験模型を作成するとともに、このような模型に対して実際の現地での電磁波探査、弾性波探査を模擬した実験を実施する。特に地盤、構造物内の間隙構造や水分および強度の変化を高感度、高分解能に検出する技術の開発を目的とした基礎的試験を実施する。 以上の結果を元に現在まで開発を行なってきた技術について、理論的な展開を整理するとともに数値実験を行った後に、実際の野外計測および室内実験における実計測データへの適用を図ることによって実証試験を行なう。 普及可能な技術とするためには、野外でも数点以上の同時多点モニタリングを可能にする技術が必要であり、また耐久性、耐候性に優れるため野外での中長期的な運用も必要である。そこで構造物・基礎の診断に適したシステムの構築のために光センシング技術の適用可能性を検証する。 以上の結果をもとに、貯水施設および基礎とその接合部に関して、長期供用時や大規模地震後等に想定される変状を高感度で検出する新たな技術の開発を行なう。 野外での現地調査および室内実験においては、資料整理や計測解析に補助作業が必要であるため作業補助員を雇用あるいは業務として実施し、効率的な実施をはかる。数値実験と計測結果のデータ処理は既存の計算リソースでは不足するため解析用サーバの導入を図る。研究成果については米国地球惑星物理学連合等を含む国内外の学会で発表を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
21円の残額となったが、高額ではないためその金額に該当する執行を行なうよりも、次年度経費とあわせて執行することが効率的、効果的と考え、次年度使用とした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度経費とあわせて野外調査や室内実験に用いる消耗品(養生テープ等)等の購入に使用する。
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