研究課題/領域番号 |
25292151
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊藤 博通 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00258063)
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研究分担者 |
宇野 雄一 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90304120)
黒木 信一郎 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00420505)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流(ベルギー) / サフラン / 子球肥大 / 気温制御 / シンク強度 / デンプン含量 / 光拡散 / 非破壊計測 |
研究概要 |
大分県竹田市産のサフランを使用して育成チャンバー2台で栽培実験を行った。検討項目は次の3点である。検討項目①:摘芽の調整(分球数の調整)、検討項目②:子球形成期における低温処理の必要性、検討項目③:子球肥大期における温度条件が子球の肥大成長に与える影響。チャンバー内の環境設定値はサフラン球茎の成長段階(開花誘導期間、子球形成期間、子球肥大期間)に応じて,温度,湿度,CO2濃度及び明暗周期を変化させた。また栽培は全て水耕栽培で行った。サフラン球茎は重量によって翌年の開花率が変化し、重量20 g以上で約100 %となる。全ての試験区で子球重量平均値が20 gよりも大きくなった。検討項目①:芽の数を増やしても母球重量と同程度の重量の子球が得られるため、母球に残す芽の数は2つがよいと考えられた。検討項目②:子球形成期間中の低温処理は必要ないと考えられた。検討項目③:子球肥大期間中に低温条件で栽培した試験区は高温条件で栽培した試験区よりも子球重量が大きい傾向があったが、有意差は確認できなかった。また、栽培期間が平均40日間長かった。以上の結果から、母球と同程度の重量の子球が収穫でき,かつ栽培期間が短い高温条件での栽培が良いと考えられた。 光拡散画像計測システムの構築については、白色レーザー光源、分光器、CMOSカメラ、レンズ、計測制御用PCを購入し、機器間の接続を完了した。光源は170-2100 nmの波長光を均等に含むレーザー光源である。レーザー光を光ファイバーで分光器に誘導し、600~1000 nmの波長範囲で5 nm間隔で分光後にレンズで集光し被写体に照射することができる。被写体で観察される拡散現象を撮影し、保存する。この非破壊計測法のキャリブレーションのために必要なサフラン球茎のデンプン含量測定法に関する予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サフランを人工環境下で水耕栽培すると栽培期間の短縮と薬効成分の高濃度化を実現できるが、子球(新球)の肥大が進まず次世代の優良母球が得られないことが問題になっている。また、優良母球の選別法も確立されていない。肥大が促進されない理由は葉(ソース)で生産された炭水化物を子球(シンク)が受け取る能力、即ちシンク強度を高く維持できないことにある。土耕栽培ではシンク強度に影響を与える環境要因は光質と根圏の温度であることがわかっている。水耕栽培で子球肥大を実現するための光質と根圏温度の制御法を開発することと、柱頭収量増加に有利な母球を非破壊で迅速に選別する手法の開発を目的としている。 2013年度では子球肥大を実現するための根圏温度の決定および光拡散画像計測システムの構築を行うことになっていた。既往の文献を参考にして、花芽分化、子球形成および子球肥大の各ステップで気温を設定し、合計8試験区で栽培実験を行った結果、子球重量は開花率100 %を保証する重量を超えた。従って、当初の予定通り水耕栽培と気温制御により優良な子球の生産に成功した。光拡散画像計測システムの構築では機器の選定にかなりの時間を要した。必要な仕様を満たし、かつ異なるメーカーの機器を使用して計測システムを構築するため機器間の相性やソフトウェアの機器に対する動作確認が必要であったからである。システム構築では当初の予定からやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
★遠赤色光が子球肥大に与える影響の解析:当初の計画通り栽培光源の赤色光と遠赤色光のエネルギー比であるR/FR比を小さくすることにより葉から子球への炭水化物の転流促進が可能かどうかを解析する。2台の人工気象器のうち片方の光源のR/FR比を1に変更する。他方の人工気象器には通常の蛍光灯を使用しR/FR比を∞とする。根圏部温度は2013年度に決定した最適値を適用する。 ★光拡散画像計測システムの構築:2013年度に購入したハードウェアがお互いに連携し、かつ自動的に動作するようなソフトウェアプログラムを年度の前半までに完成させる。 ★光拡散画像計測値から母球炭水化物含量を推定するモデルの構築:栽培用とは別に用意した母球50個を用い、光拡散画像計測システムによる光拡散画像計測と破壊計測によるデンプン含量を測定する。全80波長について光拡散画像を取得する予定である。全波長の光拡散画像から得られる拡散光輝度の照明スポット点からの減衰曲線を指数関数あるいは直線式で近似し、これらモデル式中のパラメータからデンプン含量を推定するモデルを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
光拡散画像計測システムの構築の進行計画にやや遅れが生じた。装置選定にかなりの時間を要したため計測システムを制御して自動計測を実現するプログラム開発ができなかった。このためサフランの光拡散画像を実測することができなかった。この実測には光計測に必要な消耗品がかなりあるが、実測しながら必要な製品を選定し、購入する必要があったため予算を消化できなかった。 2014年度では光拡散画像計測システムを完成させ実測を行うので昨年未使用であった予算を完全に消化する見込みである。この予算の多くは光定盤、ミニ暗室、デンプン含量計測用試薬など光計測に必要な消耗品購入にあてる。この他、サフラン栽培実験に必要な園芸資材、水耕肥料、解析に必要なソフトウェアやPC関連消耗品の購入に使用する。また、調査、研究打ち合わせおよび成果発表に必要な旅費、さらに不測の装置故障に伴う修繕費にも使用する可能性がある。
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