研究課題/領域番号 |
25292158
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
盧 尚建 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90322130)
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研究分担者 |
鈴木 啓一 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10344706)
中島 恵一 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター 酪農研究領域, 研究員 (70362150)
芳賀 聡 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 草地管理研究領域, 研究員 (90442748)
萩野 顕彦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80156249)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ウシ / ケメリン / 肝細胞 / 乳腺細胞 |
研究実績の概要 |
本年度はウシ培養肝臓細胞と脂肪細胞におけるケメリンの作用機構を明らかにするために、ケメリン受容体と糖代謝・脂質代謝に関連する遺伝子の発現量を調査した。 1)ウシの代謝が大きく変化する離乳前後の肝臓に注目し、ケメリン遺伝子およびタンパク質の発現を調節する因子について調査した。ウシケメリン抗体を用いて、脂肪組織と肝臓組織で分子量16kDaのケメリンタンパクの発現を確認した。ウシの初代培養肝細胞において、プロピオン酸添加によるケメリンの遺伝子発現には変化が見られなかったが、インスリン添加によるケメリンの遺伝子発現量は、離乳前後の肝細胞において有意に抑制された。さらに、インスリン刺激区での細胞質内のケメリンタンパク質発現は変化しなかったが、培地中のケメリンタンパク量は有意に抑制された。以上のことより、離乳前後でケメリンの遺伝子発現量が変化し、体内での糖代謝と深く関係する因子であることが示された。 2)ウシ乳腺上皮細胞株(MAC-T細胞)を培養し、1)ケメリン受容体であるCMKLR1、CCRL2のmRNA発現、2)TNF-αおよびアディポネクチン刺激時のCMKLR1とCCRL2のmRNA発現量、3)ケメリン刺激時の糖代謝・脂質代謝に関連する各遺伝子のmRNA発現量を調査した。結果として1)MAC-T細胞においてCMKLR1とCCRL2の発現が確認された。2)TNF-α刺激によりCMKLR1発現は低下し、CCRL2発現は上昇した。アディポネクチン刺激によりCMKLR1発現は低下した。3)ケメリン刺激によりSCD-1およびGLUT1、INSR、IRS1発現が上昇した。【結論】ウシ乳腺上皮細胞はケメリン受容体を発現しており、ケメリンは乳汁合成に重要な脂質合成やグルコース取り込み、インスリンシグナルを調節する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウシケメリンの分泌調節機構を明らかにするために、平成26年度は培養肝臓細胞と乳腺細胞において実験を進めてきた。ウシケメリンの分泌細胞である肝臓細胞において分泌調節因子の探索を行い、インスリンによって調節されることを解明した。乳腺細胞においてはケメリンによって脂質と乳タンパク質合成を促進することが明らかにした。このように多数の研究成果と知見を得ることが出来たため、当初の計画とおり進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度と平成26年度の結果を踏まえ、離乳前後の血液中のケメリンの分泌量を解析し、ウシ体脂肪蓄積におけるケメリンの生理的な役割について検討する予定である。
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