研究実績の概要 |
claudin familyのmRNAとタンパク質発現を引続き分析した。CLDN 1~24の塩基配列を調べ,ブタでの配列が不明のCLDN 13, 21, 24以外のclaudinsのプローブを設計してmRNA発現を解析し,胚盤胞では,CLDN 1, 4以外に6, 7, 8, 9, 12, 14を発現していた。これらのclaudinsついて免疫蛍光法でタンパク質の分布を調べた。claudin 4, 6と 7はTJに局在し,8, 9, 12, 14は細胞質を中心に,核あるいは核周辺に存在し,すでに調べたclaudin 1同様にTJの構造と異なる分布を示しており,TJに直接関与しないことが示唆された。 将来,胚におけるclaudinsの発現性と胚発生の関係を調べるための基礎情報を集積した。Glucose (G)とFructose (F)がブタ胚の着床前発生に及ぼす影響を調べ,どの発生ステージの着床前胚もGを利用できるが,初期分割胚はFを利用できなかった。後期4細胞胚は,その後,炭水化物が無くても,発生率などに明確な差もなく胚盤胞に発生し,脂質やアミノ酸などをエネルギー源として利用できることが示唆された。ブタ胚は,タンパク質のO-GlcNAc基の修飾を行っており,4細胞以降の発生に, O-GlcNAcをタンパク質から除去する必要があった。 このようなデータの考察には,胚性遺伝子活性化(ZGA)時期が重要となる。本研究に単為発生2倍体を使っているので,単為発生2倍体におけるZGAを特定する必要がある。そこで,単為発生2倍体胚における新規合成RNAの検出とRNA polymerase IIのリン酸化を調べ,受精卵と同様に,2細胞に低いRNA合成を行った後,4細胞にはZGAに伴うRNAの合成を開始し,ブタ単為発生2倍体は受精卵の発生特性をZGAでも概ね再現されていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画の核心部分を構成するclaudin family タンパク質のmRNAとタンパク質の発現解析について,平成25年度は,mRNA発現を確認しているclaudin 1と 4に対して,着床前発生期における発現性を明らかにした。その後26年度に,残りのclaudins(塩基配列が不明のclaudin 13,21,24を除く)についてmRNAの発現を解析した。その結果上記のように,CLDN 1, 4に加えて, 6, 7, 8, 9, 12, 14の発現を確認した。これらのclaudinsのタンパク質レベルの発現を免役蛍光法により解析し,claudin 4, 6, 7はTJに局在し,1, 8, 9, 12, 14はTJに対して異所性性の,細胞質を中心に分布することを明らかにした。一方,siRNA注入によるKD効果と、GFP結合CLDN mRNA注入によるclaudinの過剰発現が着床前発生に及ぼす影響を,claudin 1と 4で解析した(一部H25年)。claudin 1は異所性分布を示すが,KDによる結果は,初期分割に役割を持つことを示唆していた。典型的なTJ構造への局在を示すclaudin 4は,胚盤胞以降の発生において,TJ機能に重要な役割を持つことを示唆するだけでなく,初期分割期にも重要な役割を持つことも示唆された。 その他,将来的に,促進的/抑制的な発生条件のもとで,タンパク質レベルで発現するclaudinの局在性などの変化と発生能力の関係を調べる計画であるが,そのために,G, FとP+Lについて,初期分割や胚盤胞への発生が受ける影響の詳細な基本データの集積を完了し,さらに,初期胚では糖新生やGlcNAc修飾が機能していることも明らかになった。 このように,26年度までの実験は,計画を大幅に超えて進行し,おおむね収束の領域にまで達していると判断している。
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