研究実績の概要 |
卵管粘膜において、微生物関連分子認識受容体のToll様受容体(TLR)による微生物認識能,その下流で抗菌ペプチドのトリβディフェンシン(AvBD)やサイトカイン産生のために働く情報伝達機構を解析し, AvBDによる卵管の感染防御機構を明らかにすることを目的としている。TLRが微生物成分を認識すると、その下流の細胞内情報伝達分子によって転写因子が活性化し、抗菌ペプチドやサイトカイン発現が誘導されると推定している。 培養膣部細胞をdsRNAウイルスのPolyinosinic-polycytidylic acid (Poly I:C)、グラム陰性菌の外膜成分であるLPSと、微生物の非メチル化CpG-オリゴDNA(それぞれTLR3, 4, 21のリガンド)で刺激すると、AvBD発現には影響しなかったが、サイトカインのIL1β、IL6、IFNγの発現が上昇した。転写因子であるNFκBの阻害剤を加えてこれらのTLRリガンドで刺激するとサイトカインの発現の上昇は抑制された。一方、他の転写因子であるAP1(cfos、cjun)の阻害剤を添加してTLRリガンドで刺激すると、サイトカインの上昇を抑制することはなかった。このことからTLR4,5,21を微生物成分が刺激すると、NFκBを転写因子として炎症性サイトカインの発現を誘導することを示唆した。今後は他のTLRリガンド(TLR2,TLR5,TLR7)のAvBDとサイトカイン発現を明らかにすることでさらに詳細な卵管の感染防御機能の解明を計画する。
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