本研究は産卵鶏の卵管における感染防御機構を明らかにすることを目的としている。これまでに, Toll様受容体(TLR)のリガンドで卵管細胞を刺激すると,炎症性サイトカインのIL-1Bが産生され,これが抗菌ペプチドのトリβ-defensin(AvBD)の発現を誘導することを明らかにした。感染による炎症に伴って誘導されるメディエータによるAvBD発現の誘導作用は検討されてないので、本年度はこれを明らかにすることを目的とした。伝染性気管支炎ウイルス(IBV)は卵殻形成の機能を障害するので、IBVが子宮部の抗菌ペプチド、インターフェロン(IFNs)、プロスタグランディン(PGs)の発現に及ぼす影響を解析した。 IBV抗原として(弱毒化ワクチン;aIBV)を卵管に接種すると、RNAウイルスパターンを認識するTLR3と7の発現が上昇したので、RNAウイルス感染でこのパターン認識力が高まるものと考えられた。また、aIBV接種は子宮部の抗菌ペプチドのAvBD1。2、4-7の発現やカテリシジンの発現を高め、さらに抗ウイルス作用があるI-IV型インターフェロンの発現も誘導することが明らかになった。また、COX-1と-2は卵管各部の粘膜上皮と子宮部管状腺に局在し、COX-1発現は漏斗部で高く、COX-2発現は子宮部で高いこと、また放卵時に子宮部のCOX-1発現が高いことが明らかになった。aIBV感作により子宮部のCOX-2発現とPGE2産生が高まることも示された。これらの結果から、IBV感染が起こると、抗菌ペプチドやIFNの産生で抗ウイルス免疫応答が高まると同時に、PGs産生も並行して高まるものと考えられた。同免疫関連分子の発現とPG産生とが並行して起こるので、PGsが抗ウイルス免疫応答を誘導する可能性があるものと推定された。
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