研究課題
近年、胎児期から生後の初期成長期の各臓器の形成・成熟の感受性の高い、いわゆる可塑性の高い時期の栄養環境により、その後の動物体の代謝システム、特に肝臓、骨格筋および脂肪組織の代謝に多大な影響を及ぼすことが報告されている。エピジェネティクス研究と関連して代謝プログラミングとも呼ばれる。このメカニズムを家畜の飼養技術としてポジティブに取り入れ、すなわち、胎児期あるいは初期成長期の栄養制御により、 ウシのフルライフにわたる基盤的な代謝レベルをプログラミングし、最終的な産肉性、特に肉質と肉量を制御し、効率的、省力的かつ種々の環境に適合できる次世代型の革新的家畜飼養システムを開発したい。本研究では、特に妊娠牛(胎児期)から栄養環境を変化させ、新生子牛の出生後に、肝臓、骨格筋および脂肪組織の代謝を網羅的に調査し、ウシの代謝プログラミング機構の解明のための基盤的実験を行う。平成26年度は、母牛の特に妊娠後期の栄養を制御し、出産させ、子牛に対しては高タンパク質および高脂肪栄養を与え、その成長を観察した。また、母牛および出産された子牛を順番に筋と肝臓からバイオプシーサンプル及び血液サンプルを採取し、血液の生理学的解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の母牛の栄養処理も何とか実施できており、新生子牛も順調に育っている。母牛の栄養制御法も、大よそ目途がたち、さらに実験に用いる頭数を増加させる必要がある。母牛の妊娠中の栄養制御は、かなり難しい部分があり、スペースと労力が必要であり、平成27年度も挑戦していく予定である。
胎児期の栄養を制御された新生子牛群は、順次それぞれ飼養される。すべての実験牛は、筋及び肝臓バイオプシーによる微量サンプル、および血液サンプルを採取し、分子生物学、形態学的解析に解析を進めていく。分子生物学的解析について肉質に関連した候補遺伝子群として、脂肪形成関連遺伝子群(前駆脂肪細胞のマーカーとしてpref-I、脂肪分化制御因子のPPARγ、SCD、FASN、その他のアディポサイトカイン)、および糖代謝に関連した遺伝子群(GLUT1、GLUT4、FBP1およびHK1等)、産肉性に関連した因子として筋成長制御因子のmyostatin、Id2(inhibitor of differentiation -2)、IGF-I(Insulin like growth factor- I)およびそのレセプター、また、筋分化ならびに発達に重要な役割を果たすMyoD ファミリー、およびPPARγ のco-activatorであるPGC-I等を中心としてその他のエネルギー代謝系関連遺伝子群、サーシュインやmTOR関連遺伝子群も含めて、それらの発現に関してリアルタイムPCRおよび差異の認められた遺伝子に関しては、in situハイブリダイゼーション(分子組織化学)法に挑戦し、mRNA レベルでの発現解析を行う。また、エピジェネティクス解析も平成27年度に実施していく。全体として、まだ実験に用いる頭数を増加させる必要があり、現在計画中である。
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