研究課題
分化初期の衛星細胞が合成・分泌するsemaphorin 3A (Sema3A)が筋細胞特異的転写制御因子myogenin依存的に筋線維型を制御する細胞外リガンドであることを検証するため、H26年度は衛星細胞特異的Sema3Aノックアウトマウス(Sema3A-cKO)を用いたIN VIVO実験の準備を進めた。先ず、Sema3A-cKO マウスの作出に関しては、Pax7CreERT2マウスとSema3ALoxPマウスの交配により生まれる仔マウスからジェノタイピングによりCreERT2およびLoxP配列がホモ挿入された個体を選別し、これらをさらに複数回交配することにより目的のPax7CreERT2-Sema3Aflox雄マウスを得た。次に、ERT2の合成リガンドであるタモキシフェンの腹腔内投与量および処理期間を至適化するなどし、タモキシフェン投与により衛星細胞特異的にSema3A遺伝子をノックアウトすることに成功した。さらには対照区の設定に関しては、当初予定していたタモキシフェン非投与マウスではなく、Pax7CreERT2マウスおよびSema3ALoxPマウスにタモキシフェンを投与する実験区が適当であると結論した。以上の成果により、Sema3A-cKOマウスを用いたIN VIVO実験、即ち、筋損傷・再生に伴う筋線維型の表現型解析を実施する準備は全て整った(H27年度に実施予定)。予備実験を既に開始し、遅筋型ミオシン重鎖の発現低下および速筋型ミオシン重鎖の代替的発現増加などの予想通りの結果を得ている。
2: おおむね順調に進展している
上述の通り、H26年度に予定していたSema3A-cKOの作出および実験条件の至適化など、研究計画は概ね順調に進行している。初年度の細胞培養系での実験結果を生体内で検証する極めて重要な実験系であり、その成果のインパクトは学術的にも極めて大きい。Sema3Aが遅筋型筋線維の形成を誘導する初期決定因子であり、その細胞内シグナリングには筋特異的制御因子myogeninとその共役調節因子MEF2DとHDAC7が関与することが証明出来ると期待される。これらの知見は、分化初期の衛星細胞が合成・分泌するSema3Aリガンドによって筋管(将来、筋線維へと成熟する)の線維型が自律的に決定されることを示しており、これまでの運動刺激説やPPARdelta/PGC1alpha転写制御説と本質的に異なる新規の制御機構であると期待される。IN VIVO実験での直接証明を待って、本研究成果を著名な学術雑誌に投稿する予定である。
in vitroの実験結果の生理学的重要性を直接証明するため、衛星細胞特異的Sema3Aコンディショナルノックアウトマウス(Sema3A-cKOマウス)を用いたin vivo実験を実施する予定である。マウスの作出は既に成功したので、4月下旬から実験を開始すべく準備を進めている。Sema3A-cKOマウスの後肢下腿部筋を物理的あるいは化学的に損傷させ筋再生を誘導する実験をデザインしており、この場合、衛星細胞からSema3Aが合成・分泌されないため遅筋型筋線維が形成されず、筋線維型組成(遅筋・速筋型筋線維の組成比)が元の状態に復帰しないと予想している。極めて重要かつインパクトのある実験結果になると期待している。実験の再現性も含めて確実に実施する所存である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
International Journal of Biochemistry and Cell Biology
巻: 54 ページ: 272-285
10.1016/j.biocel.2014.05.032.
Animal Science Journal
巻: 85 ページ: 994-1000
10.1111/asj.12264.
International Innovation
巻: 139 ページ: 89-91
栄養生理研究会報(家畜栄養生理研究会)
巻: 58 ページ: 19-25