研究課題
分化初期の筋幹細胞(衛星細胞)が合成・分泌するSema3Aが細胞膜受容体・転写制御因子myogenin依存的に遅筋型筋線維の形成を誘導する因子であるかどうかを調べるため、最終年度では先ず、衛星細胞特異的Sema3Aノックアウトマウス(Sema3A-cKO)を用いたin vivo実験を進めた。後肢下腿部のヒフク筋にcardiotoxinを注入し筋損傷を誘導し、筋再生が完了する損傷後28日目に、遅筋型筋線維割合の指標となる筋持久力(脛骨神経の電気刺激によって発生する最大発揮張力の経時的減衰)を測定した。最大発揮張力の初期値は有意に増加し、その経時的減衰は対照区に比べ大きかったことから、Sema3A-cKOにより遅筋型筋線維割合が減少することがわかった。次に、衛星細胞の培養系において、neuropilin2およびplexinA3をノックダウンするとmyogeninと遅筋型ミオシンの発現が有意に低下し、一方、neuropilin1およびplexinA1, 2をノックダウンするとmyogeninと速筋型ミオシンの発現が有意に増加した。これら結果から、受容体neuropilin2/plexinA3にSema3Aが結合すると遅筋型ミオシンの発現が誘導されると共に、neuropilin1/plexinA1, 2は速筋型ミオシンの発現抑制をシグナリングしていると考えられた。従って本研究により、衛星細胞が合成・分泌するSema3Aリガンドにより細胞膜受容体・myogeninからなるシグナリング軸を介して遅筋型筋線維の形成が誘導されることが明確になった。更には、受容体neuropilin1/plexinA1, 2の食品由来アゴニストを見出し、これをラットに給餌あるいは衛星細胞培養系に添加すると遅筋型ミオシンとmyogeninの発現が増加することも確認した。遅筋型筋線維の形成を食品成分で誘導する栄養機能学的制御技術の開発を展望した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件)
FEBS openbio
巻: - ページ: -
10.1002/2211-5463.12050
Asian-Australasian Journal of Animal Sciences
巻: 29 ページ: 1-15
10.5713/ajas.16.0001R
PLOS ONE
巻: 10 ページ: -
10.1371/journal.pone.0134303
Physiological Reports
巻: 3 ページ: e12553
10.14814/phy2.12553
食肉の科学(日本食肉研究会)
巻: 56 ページ: 103-112