研究課題
成果1.家畜アフリカトリパノソーマ病重要病原体であるトリパノソーマコンゴレンセ(Tc)のツェツェバエ体内ステージ(EMF)特異的に発現する遺伝子を網羅的に検索した結果、睡眠病病原体のブルーストリパノソーマ(Tb)血流型虫体特異的ハプトグロビン・ヘモグロビン複合体(HpHb)レセプターのオルソログが、TcではEMF特異的な遊離型ヘモグロビンレセプター(TcEpHbR)であることを明らかにした(Yamasaki et al. 2016 Parasites & Vectors)。TcEpHbRのリガンド特異性がHpHbから遊離ヘモグロビン(Free-Hb)に変化した理由は、EMFがベクターの吸血毎に高濃度のFree-Hbに暴露される現象に寄生適応した結果と考察される。TcとTbで共通祖先遺伝子由来のレセプターが異なるリガンド特異性を示す例は本研究が世界初であり、治療薬標的や伝播阻止ワクチンなどへの応用のみならず、トリパノソーマの進化と寄生適応を解明するうえで極めて重要なマイルストーンである。成果2.昨年度に引き続きEMF特異的RNA結合タンパク質TcRBP6の発現動態を解析した結果、EMFで他3ステージに比較して有意に発現量が増加していることを明らかにした。TcRBP6はEMF細胞質内にドット状に観察された。RNAゲルシフト法の結果、遺伝子組換えTcRBP6はシトシンに富んだRNA領域に結合する可能性が示唆された。また、RNA免疫沈降法の結果、コントロールに比較して抗TcRBP6抗体群では、有意に多量のRNAが精製された。TcRBP6のドット状の局在は、転写後調節を司るRNA顆粒を示唆している。現在、精製されたRNA群の解析・同定を行っている。今後、これらのRNA配列を解析することで、TcRBP6が発現調節を司っている遺伝子群およびTcRBP6の結合するRNA配列モチーフが明らかとなり、トリパノソーマのEMFへのステージ変換・維持に関わる分子機構を明らかにできると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件)
Parasites & Vectors
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