研究課題
本研究はベクター媒介性感染症に着目し、宿主転換にともなう環境バリアントに対し、病原体がどのように適応し感染を成立させるのか、そのメカニズムを包括的に解明しようとするものである。マラリア原虫・フィラリアなどに代表されるベクター媒介性病原体は哺乳動物と節足動物との生物学的に大きく異なる宿主間を行き来することで自己拡散を行う。申請者による現在までの研究において、病原体は宿主転換時に細胞傷害を受けており、その修復機構は寄生環境へ適応し伝播を成立させるために必須であることが明らかになってきた。そこで本申請では、感染症成立における宿主転換傷害とその修復・適応機構の意義を明らかにすることを目的とした。各種ベクター媒介性感染症における、宿主転換傷害修復機構の意義を明らかにするため、以下の年次計画に基づいて研究を実施した。1. マラリア原虫排除・分化抑制ポイントの解析変異体原虫を用いた解析により、哺乳動物ステージにおいては有性生殖世代形能の著しい低下が観察された。また、ベクターステージの解析により、極至適条件では野生型と比較し遜色が無い程度には感染可能になるが、通常条件下においては、感染能力が著しく低下し、宿主転換時のストレスの大きさが、その後のベクターへの感染性を左右する事が示唆された。2. マラリア原虫宿主転換における関連遺伝子の動態解析次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析によって、宿主転換時に必要となる候補遺伝子が同定された。これらの遺伝子にたいして、宿主転換との関連性の詳細について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初の期待と同程度の進捗および結果が得られており、順調に研究が進展していると考えられるため。
現在までに得られた結果を基盤とし、当初の年次計画に従い遂行する。
マラリア原虫排除の時空間ポイントの解析において、吸血時期における感染表現型の差異に関する新たな知見を見出し、その知見に対する重点的な追加解析が必要と考えられたため。物品費、人件費、旅費として充当予定
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