研究課題/領域番号 |
25292169
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
横山 直明 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (80301802)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小型ピロプラズマ病 / 牛 / 増殖メカニズム / 赤血球 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
ウシ小型ピロプラズマ(Theileria orientalis)の増殖メカニズムの全体像を解明するために、平成26年度では以下の研究成果を得た。
1)MPSP抗体を用いてTheileria orientalisのシゾントの観察を試みたが、検出できなかった。2)SCIDマウスの実験感染系を用いてマダニの唾液腺内のスポロゾイトを形態学的に観察し、遺伝子発現のプロファイルを解読した。3)これまでの研究成果を整理して、我が国のTheileria orientalisの生態と疫学の実態、世界のTheileria orientalisの遺伝子多型と進化について総説としてまとめた。4)スリランカの水牛に感染しているTheileria orientalisの遺伝子多型を解析し、宿主動物であるウシと水牛の間でどのように感染伝播・増殖しているのかを解明した。5)Theileria orientalisのピロプラズム期の原虫膜蛋白質p23はウシ赤血球や白血球とは吸着活性を示さないものの、ウシ腎臓細胞膜上のヘパリン様糖鎖と吸着する可能性が示唆された。一方、Theileria orientalisのスポロゾイト期及びピロプラズム期の原虫膜蛋白質であるMPSPはウシ赤血球と吸着することが判明し、かつヘパリンで競合阻害されることも判明した。すなわち、p23及びMPSPはそれぞれヘパリン様糖鎖を認識しているが、異なる標的細胞への感染・増殖に機能している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小型ピロプラズマのシゾントの検出には至らなかったが、スポロゾイトをマウス感染試験で再現し、その転写プロファイルを解読できた。また、Theileria orientalisの生態と疫学の実態や、遺伝子多型と進化を学術的に取りまとめ、かつ増殖メカニズムに重要な原虫側のリガンドと標的細胞の一端を明らかにできた。本研究は概ね順調に進展してると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、1)シゾント感染細胞の検出、単離、及びその標的有核細胞の同定解析を継続するとともに、得られた材料と確立した技術を用いて、標的有核細胞の感染赤血球取り込みに伴う免疫応答、シゾント増殖を標的とした薬剤のスクリーニング法の確立、シゾント感染細胞に提示される細胞性免疫の標的ペプタイド群の同定法の確立等の応用研究を実施する。また、2)スポロゾイト期及びピロプラズマ期の転写プロファイルから間のシゾント期に関わる原虫遺伝子を推測・解析し、小型ピロプラズマ病に対する新規ワクチン候補分子の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
小型ピロプラズマのピロプラズマ期とスポロゾイト期の遺伝子解析が先行したため、シゾント期の解析が次年度に移行し、その結果として次年度使用が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の次年度使用分経費として、物品費:2,600,000円、旅費:800,000円、人件費・謝金:500,000円、及びその他:500,000円(計4,400,000円)を予定している。
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