研究課題
本研究は、学習・記憶の中枢である海馬歯状回のニューロン新生に着目し、ラットとマウスを用いて、神経毒性物質の発達期曝露による神経幹細胞、シナプス・軸索や髄鞘の形成過程を標的とした傷害機序の解明を目的とする。更にマウスで、新生ニューロンに受け継がれるメチル化変動を網羅的にスクリーニング解析し、不可逆的ニューロン新生障害指標の確立を目指した。27年度は、酢酸鉛のニューロン新生の分化中期の傷害性とそれに対する歯状回門のGABA性介在ニューロンの持続的な増加、および軸索障害物質であるグリシドールの遅発的なGABA性介在ニューロンへの影響を見出した。また、次世代シークエンシング法による発現調節領域のメチル化変動遺伝子を探索した結果、3,3'-イミノジプロピオニトリルでは、3遺伝子(Kiss1,Edc4,Mrpl38)でメチル化配列を特定しmRNA発現量の減少を確認した。見出したMRPL38はミトコンドリアの構造および機能維持に関与する分子で、免疫染色の結果、GABA性介在ニューロンにおける発現が不可逆的に減少しており、ニューロン新生障害に対するエピゲノム毒性の関与が示唆された。ヘキサクロルフェンでは、3遺伝子(Dmrt1,Dlx4,Plcb4)でメチル化配列を特定しmRNA発現量の減少を確認した。免疫染色の結果、見出した指標分子の海馬歯状回門の介在ニューロンにおける発現が離乳時のみで減少しており可逆的であった。メチルニトロソウレア(MNU)では、メチル化配列の特定には至らず、ニューロン新生への影響が弱かったためと考えられた。以上より、ニューロン新生障害時のメチル化変動遺伝子の網羅的解析の結果、不可逆的ニューロン新生障害指標候補遺伝子を見出した。今回の結果では、メチル化変動遺伝子の物質間での類似性は確認されなったことから、障害機序によりメチル化変動する遺伝子が異なる可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Appl. Toxicol.
巻: 36 ページ: 211-222
DOI: 10.1002/jat.3162
巻: 35 ページ: 884-894
10.1002/jat.3086
http://www.tuat.ac.jp/~tuatlvp /lvp/top.html