蛋白質のミスフォールデング(構造変換)に起因する疾病としては、プリオン病とアミロイド症が知られている。血清アミロイドA蛋白質(SAA)から構造変換して形成されるAAアミロイドは、致死性のアミロイド症を誘発し、異種動物(ウサギ、マウス)に経口的に伝播する。本研究では、ウシおよびニワトリのアミロイド症に由来するAAアミロイドの伝播性を中心に、AAアミロイドの形成や分解性および熱抵抗性について検討し、動物由来のAAアミロイドのリスクについて明らかにした。 検討項目1.特異的なモノクローナル抗体の作製(mAb):ウシSAAに対しては、ウエスタンブロットおよび免疫組織化学検査で有効なmAb 25BF12を得ることができた。 検討項目2.同種および異種動物へのAAアミロイドの伝播性と免疫組織化学的解析:ウシおよびニワトリ由来のAAアミロイドは、マウスに伝播した。しかし、自己免疫疾患モデルマウスおよび糖尿病疾患モデルマウスを用いた動物由来AAアミロイドの伝播性の解析では、コントロールに比べて伝播性は低率であった。 検討項目3.動物由来AAアミロイドの熱抵抗性試験:全般的に、AAアミロイドは、100度の熱に抵抗性を示し、マウスに伝播することが示された。一方、135度の加熱では、AAアミロイドの伝播性は消失し、動物由来AAアミロイドは、熱に抵抗性を有することが明らかとなった。 検討項目4.培養細胞を用いたAAアミロイドの蓄積性と分解性、および細胞内活性因子の解析:免疫系細胞Raw株において、SAAとAAアミロイドを添加した時にのみAAアミロイドの蓄積が細胞の周りに観察され、免疫系細胞の重要性が明らかとなった。また、腸管系細胞でのAAアミロイドの添加によりに SAA1に比べてSAA3でIL-6やTNF-αの発現が顕著に上昇することが明らかとなった。
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