研究課題/領域番号 |
25292177
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
稲葉 睦 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (00183179)
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研究分担者 |
山盛 徹 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (00512675)
大塚 沙織 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (10566152)
佐藤 耕太 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (50283974)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小胞体関連分解 / プロテアソーム / 蛋白質分解 / Derlin / 小胞体シャペロン |
研究実績の概要 |
1. Derlin-1とDerlin-2のキメラ蛋白質Der1/2とDer2/1を用い、これらとR664X AE1が相互作用することを示したが、特にDer2/1の発現効率の低さが解析の障害になっている。以下に述べる変異体についても同様の解析を試みている。 2.基質側構造の違いによる分解過程の相違を探索することを目的に、細胞質ドメインを欠くΔCD AE1、R664X AE1同様のpremature termination変異体であるR826C AE1、R845X AE1を作製、HEK293細胞に発現させて分解動態と細胞内分布を解析した。 1)R845X AE1は、R664X AE1と類似の細胞内分布、即ち小胞体ERにおける滞留を示し、プロテアソーム阻害により分解が抑制されたが、その分布に変化は見られなかった。R826C AE1変異体は、細胞内分布が不明確、かつ細胞生存率が低く解析が困難であった。一方、ΔCD AE1は、小胞体近傍、あるいは細胞質領域に不溶性凝集塊アグリソームを形成し、プロテアソームを阻害するとその増加が認められた。これらの結果から、R845XとΔCD AE1は、いずれもR664X AE1同様にプロテアソームによる分解を受けることが示された。R664XとR845Xが小胞体に止まって分解されるのに対しΔCDは小胞体から細胞質に逆行輸送で引き抜かれてからプロテアソーム分解を受ける可能性が示された。これは、R664X、R845XとΔCDとでは逆行輸送の過程と分解の場が異なることを示している。 2)R845XとΔCD AE1の分解は、siRNAによるDerlin-1の抑制時とDerlin-2の抑制時とで明確な違いが認められなかった。この点は従来のR664Xでの知見と異なる。また、R845X AE1、ΔCD AE1はプロテアソーム阻害時にイムノブロットでのラダー形成が認められないことから、いずれもUb化を受けないことが示唆された。これらの知見はさらに検討と実証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.R845X、ΔCDなど、複数の構造変異体の分解過程をR664X AE1と比較することにより、同じAE1分子でありながら構造変異の相違により小胞体からの逆行輸送に違いがあること(分解に先立って分子全体が引きずり出されるか否か)、プロテアソーム分解の場が異なること(小胞体膜上か細胞質か)が示された点は大きな進展である。これにより、何がこの違いを生み出すのか、Derlin分子群はそれにどのように関与するのかの解明が次の課題となることが明らかになり、研究目的の達成に近付いた。 2.一方で、基質とDerlin-1とDerlin-2の相互作用/結合については、R845X、ΔCD AE1にR664X AE1で見られた選択性が認められず、また相互作用部位についても未同定であり、現在、Ub化非依存性の検証とともに実験を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
1.上記知見と課題をベースに、Derlin-1/Derlin-2とR664X、R845X、あるいはΔCD AE1との相互作用のメカニズムを追求する。まず、これらと20S、あるいは26Sプロテアソームの直接結合についての検討を行い、さらにDerlins-基質複合体中に同定されたp97/VCP、calnexin、TIF1β等の関与を培養細胞発現系と試験管内再構成系で解析する。 2.上記から推定される相互作用が小胞体からの逆行輸送の形式を規定することを検証し、DerlinのUb非依存性小胞体関連分解における役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験経費、特に消耗品費の節減に努めた結果、約1,400円の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品費とあわせて有効利用する。
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