研究課題/領域番号 |
25292178
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
磯貝 恵美子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80113570)
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研究分担者 |
福田 智一 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40321640)
奥村 一彦 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (60194510)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 疾病予防 / 分子標的 / 抗菌ペプチド |
研究概要 |
感染防御の最前線を担う上皮細胞や好中球などは、自然免疫機構において抗菌ペプチドを産生し感染症や癌の発症抑制に関与していることが明らかになってきた。天然物リガンドとしての抗菌ペプチドは、ひとつの標的タンパク質と結合する鍵というより、複数の標的を持ち、多彩な機能を有する鍵束と考えられる。そのため、構造修飾によって劇的に活性強度や作用が変化することがわかってきた。そこで、自然免疫分子-カテリシジンおよびデフェンシンファミリーの抗菌ペプチドを軸とした分子標的探索を行い、感染症や癌を制御するための治療的基盤の確立を目的とする。 種々の抗菌ペプチドを合成した。脊椎動物由来の抗菌ペプチドをはじめ、無脊椎動物由来の合成抗菌ペプチドの抗菌活性を検討するとともに、アミノ酸置換体についても実験をおこなった。立体構造が分子内のSS結合によって維持されている抗菌ペプチドについては分子動態シミュレーションとしてモチーフの状態などから生体内において機能発現するときの動態シミュレーションを行った。 ヒト由来の抗菌ペプチドはカテリシジンとディフェンシンの2つのファミリーに大別され、ヒトのカテリシジンファミリーとしては、hCAP18/LL-37が唯一知られている。平成25年度においては大腸癌細胞であるHCT116細胞に対し、抗菌ペプチドやその合成模倣体がアポトーシスや細胞周期の停止を引き起こすことで成長を抑制することを明らかにした。また、ステロイド骨格を基盤とした化学合成体についての検討を行い、抗癌活性が単にカチオンと疎水だけで同じ活性を有するとを明らかにした。細菌細胞に対する機能性を証明するため、タイコ酸などの主要菌体コンポーネントとの相互作用をQCM分子間相互作用測定装置で明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に進展している。しかしながら、申請時の予定消耗品等を予定通り使用したため、当初に申請していた分子間相互装置の購入を断念せざるを得ない状況となった。対応策としてレンタルによって分子間相互作用の解析を試み、データ集積を行った。申請書における金額はきちんと計算して出したものであるが、削減があると厳しい状況となる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の展開は病原微生物に対する作用と癌に対する作用の2本立てで進めていく。抗菌ペプチドの抗菌活性は細菌の種類や菌株によって異なっている。そこで菌体膜構造の違いに注目し、黄色ブドウ球菌のうち高度感受性株と低度感受性株の膜性状の違いをガスクロマトグラフィーにおける脂質分析で決定する。細菌の生存にとって過酷な環境由来の細菌はバイオフィルムを形成し、それに抵抗するとされている。平成25年度に確立したMBECTM High-throughput (HTP) Assayを利用する。ブドウ球菌以外のバイオフィルム形成細菌についてその阻害作用を検討する。抗菌ペプチドの一部はLPS結合蛋白(ペプチド)として知られてきた。平成26年度はグラム陰性菌での検討を加えるものとする。抗菌ペプチド刺激による変化をマイクロアレイによって解析する。刺激後の細胞応答は癌細胞のの種類によって、異なりapoptosisからnecrosisに至るまで様々である可能性を考えられている。実際に何らかの変化(たとえばapoptosis)に動くシグナル伝達系分子をマイクロアレイによってmRNAをReal time-PCR法で検討する。シグナル分子への直接作用の検討のため、仮定された分子と抗菌ペプチドとの相互作用を検討する。抗菌ペプチドの刺激前後の癌細胞および遺伝子強制発現癌細胞からmirVana miRNA isolation kit (Ambion) を用いてtotal RNAを抽出し、miRCUR-Y Hy3/Hy5によりラベリングし、miRCURY LNA Array (Exiqon)にハイブリダイズしてmiRNA microarray解析を行う。本解析により抗菌ペプチドで誘導されるmiRNA分子種を同定する。次に同定されたmiRNAが既存細胞内シグナル分子をどの様に制御しているかを定量PCRで検討する。以上のことから、抗菌ペプチドによって発現が亢進する、また発現が低下するmiRNAのプロファイリングを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入予定だった備品について消耗品・旅費が予想以上にかかったため、備品の購入から外部委託、レンタルへ変更し、その分の予算が浮いたため。 レンタル機器のレンタル料および消耗品費にあてる。
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