研究概要 |
致死性ウイルス性疾患である猫伝染性腹膜炎(FIP)では、有効なワクチンおよび治療法が存在しない。FIPウイルス(FIPV)感染では、ウイルスが抗体と共にマクロファージに取り込まれることで、ウイルス感染が増強すると共にTNF-αが過剰に産生され、重篤な症状を引き起こす。この現象は抗体介在性感染増強(ADE)と呼ばれる。本研究ではADE作用を誘導しない細胞性免疫誘導型ワクチンを開発するため、ウイルスに存在する細胞性免疫誘導エピトープを同定する。また、抗TNF-α製剤が治療に応用できるか否かについても併せて検討する。平成25年度はワクチン抗原のpeptideのスクリーニングおよび抗猫TNF製剤の作製を実施した。 ワクチン抗原のpeptideのスクリーニングについては、FIPVのMembrane(M)蛋白質およびSpike(S)蛋白質の一部(S1 region)を基に実施した。その結果、いずれの部分においても細胞性免疫を有意に誘導するエピトープを含むpeptideの同定に成功した(Takano and Hohdatsu et al., 2014, Vaccine 32:1834-40)。また、以前、我々が報告したFIPVのNucleocapsid(N)蛋白質由来の細胞性免疫を有意に誘導するエピトープを含むpeptideをアジュバントと共に猫に投与して、FIPV感染後のFIP発症を防御できるか否かを調べたところ、発症の防御は認められなかったものの、症状を緩和することに成功した (Takano and Hohdatsu et al., 2014, Antivir Ther in press)。 抗猫TNF製剤については、先ず、過去に我々が作製した抗猫TNFマウス抗体がFIPの症状を緩和する可能性を明らかにした(Doki,Takano and Hohdatsu et al., 2013, Res Vet Sci 95:1248-54)。今後は、臨床に応用するために本抗体の改良を実施する予定である。猫TNF-αを中和する猫TNFレセプターについては、現在、開発中である。
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