研究課題/領域番号 |
25292184
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
吉岡 耕治 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門病態研究領域, ユニット長 (20355192)
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研究分担者 |
鈴木 千恵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門企画管理部, チーム長 (50414735)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 獣医学 / 産科 / ブタ / 胚移植 / 胚死滅 |
研究実績の概要 |
ブタにおける非外科的胚移植技術の高度利用のため、体外生産胚を用いて、移植した胚の死滅が起こりやすい時期と死滅に関与する因子の同定を行い、胚死滅率および流産率の低減による分娩率および産子数の改善を図り、生産現場で活用可能な胚移植技術を開発する。 成分既知完全合成培地を用いて食肉処理場由来卵巣から採取したブタ卵子の体外成熟・体外受精・体外発生により体外生産胚を作製した。前年度までに血清代替物である KSRの添加は、胚の孵化を促進し、セリンプロテアーゼの1種であるウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)の遺伝子発現を増加させることを明らかにしたことから、胚盤胞の体外発生培地に リコンビナントヒトuPAを添加して培養したところ、1μg/mL添加により無添加に比べ胚の孵化率や生存胚の細胞数を増加させるものの、別のセリンプロテアーゼであるトリプターゼに比べ、効果を示す添加濃度が10倍高いことが分かった。 ついで、人工授精を施したブタの排卵後4日目に胚移植カテーテル用いて子宮内に移植液のみを注入し、その1および2日後に子宮灌流により胚を回収した。胚の回収率(黄体数に対する回収胚数の割合)および生存率(回収胚数に対する生存胚数の割合)は、それぞれ92~94%および88~95%で、移植操作を実施しなかった対照区と同等であった。前年度までに、胚移植では移植後1日目の排卵後5日目に子宮から回収した胚の生存率は減少し、胚が孵化する排卵後6日目以降、胚の回収率も低下してこの時期に胚の死滅が起こることが推察されたが、人工授精を施したブタの排卵後4日目に胚移植カテーテル用いて子宮内に移植液のみを注入しても、人工授精胚の回収率および生存率の低下は認められず、移植操作は胚死滅を誘引しないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿い、体外生産胚の非外科的移植では、胚移植の翌日には胚死滅が起きていることを明らかにした。また、体外生産胚の体外培養において、胚の生存性を向上させる因子を見出したことから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの結果を踏まえ、体外受精後5日目の体外生産胚盤胞を、子宮深部注入カテーテルを用いて受胚豚の子宮内へ移植し、移植後1日目に子宮灌流により胚を回収する。回収胚のアポトーシスの出現頻度を人工授精胚と比較し、胚の死滅要因を明らかにする。この結果を踏まえ、体外生産胚の非外科的胚移植における至適移植胚数を明らかにするとともに、体外発生培地へのセリンプロテアーゼの添加が胚移植後の受胎性に及ぼす影響を調査する。一連の研究を通じて50%程度の分娩率および7頭程度の産子が得られる体外生産胚の非外科的移植技術の開発を目指す。
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