ブタにおける非外科的胚移植技術の高度利用のため、体外生産胚を用いて、移植した胚の死滅が起こりやすい時期と死滅に関与する因子の同定を行い、胚死滅率および流産率の低減による分娩率および産子数の改善を図り、生産現場で活用可能な胚移植技術を開発する。 成分既知完全合成培地を用いて食肉処理場由来卵巣から採取したブタ卵子の体外成熟・体外受精・体外発生により体外生産胚を作製した。体外受精後5日目の体外生産胚盤胞25個は、子宮深部注入カテーテルを用いて排卵後4日目のレシピエントの子宮内へ非外科的に移植し、移植後1日目に子宮灌流により胚を回収した。対照として人工授精を施したブタの排卵後5日目に子宮灌流により胚を回収した。回収胚の形態はGrade 1~4に分類した。回収胚はヘキスト、アネキシンVおよびヨウ化プロピジウムで蛍光染色し、移植胚のアポトーシスの出現頻度を人工授精胚と比較した。形態が良好(Grade1または2)な胚の割合は、移植胚では50%であり、人工授精胚(91%)に比べ有意に低かった。胚の総細胞数は、移植胚と人工授精胚で差を認めなかったが、アポトーシスを示す細胞の割合は回収胚全体および形態良好胚のいずれにおいても、移植胚では人工授精胚に比べ有意に高く、移植胚ではアポトーシスの出現頻度が高いことにより胚死滅が起きていることが示唆された。 体外受精後5日目の体外生産胚盤胞25あるいは40個は、子宮深部注入カテーテルを用いて排卵後4日目のレシピエントの子宮内へ移植し、移植胚数による受胎成績の違いを比較したところ、移植胚数を40個とした場合の受胎率(70%)は25個(27%)に比べ有意に高かった。また、一腹あたりの平均産子数は多い傾向(7.0頭 vs. 5.0頭)が認められ、移植胚数を増やすことにより、受胎成立に必要な生存胚の数が確保され、受胎性が向上するものと考えられた。
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