研究課題/領域番号 |
25292185
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山内 啓太郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70272440)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再生医学 / 骨格筋 / 脂肪細胞 / 筋細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、我々が取得した骨格筋脂肪前駆細胞クローンやそれを特異的に認識するモノクローナル抗体を用いて、骨格筋脂肪前駆細胞の動態解析・分化制御機構の解明を行うとともに、脂肪細胞が筋分化を抑制する機序を明らかにすることを目的としたものである。本年度は以下のような研究成果が得られた。 1.ラット骨格筋脂肪前駆細胞クローン2G11細胞を抗原として得られたモノクローナル抗体5C12の認識する抗原の同定を行った。その結果、本抗体はchondroitin sulfate proteoglycan-4 (CSPG-4)を認識することが判明した。再生筋におけるCSPG4の動態を調べた結果、筋損傷後に一過的にCSPG4陽性細胞が増加すること、また、再生筋線維周囲にCSPG4が一過的に集積することなどを見いだした。 2.新規ゲノム編集技術CRISPR/Cas9法により、ジストロフィン遺伝子変異ラットの作出に成功した。得られたラットは、骨格筋への脂肪蓄積などヒト筋ジストロフィーと極めて似た病態を示すことから、非常に優れたモデル動物となることが期待される。 3.脂肪細胞が筋芽細胞同士の融合を阻害することを前年度に見いだしたが、逆に、筋細胞が脂肪分化を抑制することを新たに発見した。さらに、この脂肪分化抑制作用には筋分化制御因子MyoDが中心的な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は骨格筋内脂肪蓄積機序の解明を目的の一つに掲げたものであるが、新規ゲノム編集技術の導入により骨格筋内に脂肪細胞を再現性良く蓄積するモデルラットが得られた。これは当初の予定には含まれていなかったが、このラットの作出により今後の研究の大きな発展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね当初の計画通りに進めるが、CRISPR/Cas9法を用いた複数の遺伝子改変ラットの作出などを導入して、さらに飛躍的な研究の進行を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に自動磁気細胞分離装置(560万円)の購入を計画していたが、実際に配分された資金の範囲ではこの機器を購入することで研究の遂行に困難を来すと判断し、初年度の購入を見送ったため。また、抗原同定にかかる費用として外部業者への委託を予定していたが、それについても学内外の研究者の協力により委託せずに行うことが出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
新規ゲノム編集技術を駆使した遺伝子改変動物の作出などに充当することで、より効率的に活用する予定である。
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