研究課題/領域番号 |
25292187
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西野 光一郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90508144)
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研究分担者 |
梅澤 明弘 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (70213486)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲノム / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
イヌやネコは偏った交配によって疾患原因遺伝子の濃縮を伴ってきた。このためヒトにおいて希少疾患と言われるものがこれらの動物では高頻度に自然発症するケースが多い。それ故、疾患動物由来人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を用いた難病原因の解明、診断、治療法の技術基盤の確立は獣医療への応用ばかりでなくヒト疾患モデルとしてヒト医療応用への貢献度も非常に高い。しかし、イヌ、ネコ、ウシなどペットや産業動物のiPS細胞の効率的な作成法は確立していない。本研究ではヒトiPS細胞の定義に準じたイヌ、ネコ、ウシiPS細胞の樹立を目的として、ヒトiPS細胞の樹立条件を基にリプログラミング因子(4~12遺伝子の組み合わせ)をイヌ、ネコ、ウシの細胞に導入し、多様な組成の培養液の条件(27条件)を組み合わせた260回に及ぶiPS細胞の樹立実験を行い、いくつかの条件で形質転換細胞を得たが、培養細胞株として樹立することはできなかった。このことからリプログラミング因子を導入した動物細胞においてiPS細胞への形質転換を阻害する要因の存在が示唆された。そこで、iPS細胞への形質転換を阻害する動物特異的な要因の探索を目的として、OCT3/4, SOX2, KLF4, c-MYCを導入したイヌ、ネコ、ウシ、ヒトの細胞に含まれる代謝物質の網羅的な定量及び比較を行った。CE-TOFMS法による網羅的メタボローム解析からヒトと比較して動物種ではスペルミジン、アスコルビン酸、リブロース5リン酸、還元型グルタチオンなどの検出値が低く、酸化型グルタチオンは高い傾向を示した。このように、動物細胞では抗酸化物質が少なく、酸化物質が多い傾向が示され、酸化ストレスの影響を強く受けていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来のヒト細胞で樹立可能な方法では成犬、成猫からはiPS細胞が樹立できなかった。イヌ、ネコiPS細胞の作成には種特異的な障害が存在していることが示唆され、各動物種に最適化されたiPS細胞作成法の開発を行う必要が生じ、動物iPS細胞作成に障害となる因子の同定を行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に実施した網羅的メタボローム解析の結果、iPS細胞誘導因子を導入したイヌ、ネコ細胞では、ヒト細胞に比べて強い酸化ストレスの影響を受けていることが明らかとなった。これらの結果を基に、抗酸化剤や低酸素培養などの条件を組み入れたイヌ、ネコiPS細胞の効率的な作成法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入備品や試薬の価格変動(キャンペーンの利用等)のため購入金額を抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の培養関連消耗品、および研究消耗品の購入に充てる。
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