研究課題
本研究では、プロテアソーム分解系が関与するマウス受精卵のエピジェネティック・リプログラミングの分子制御機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、受精直後のエピジェネティック・リプログラミングにおける母性タンパク質分解系の関与の検証を2細胞期胚で実施し、さらにこれらの時期にプロテアソーム分解系により分解される母性タンパク質群と相互作用する因子の同定を進めた。まず2細胞期における一過性のMG132処理を行い、その後の胚発生に及ぼす影響を調べた結果、2細胞期においてプロテアソームの活性阻害により最も影響を及ぼす時期が存在することが明らかとなった。さらに、一過性にMG132処理した2細胞期胚、及びタンパク質の新規合成を阻害した2細胞期胚におけるポリユビキチン化タンパク質の動態を検討したところ、マウス2細胞期胚において、積極的にユビキチン修飾系とプロテアソームによる分解が働いていることが示唆された。次に、UPSがマウス2細胞期におけるZGAの制御で果たす役割を明らかにすることを目的に、マウス2細胞期胚における一過性のMG132処理がmajor ZGA遺伝子の発現に及ぼす影響について検討した。その結果、プロテアソームの活性阻害は、major ZGA遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが明らかとなった。以上の結果から、2細胞期において、UPSは積極的に母性タンパク質を分解することで、major ZGAの開始制御及び発現量の制御に関与し、その結果、正常な胚発生が進行される可能性が示唆された。また、昨年度同定したヒストン修飾・クロマチンリモデリング因子・ヒストンシャペロンに機能分類されたタンパク質群と相互作用するタンパク質群の同定として、酵母ツーハイブリッドシステムによるマウス卵母細胞cDNAライブラリー・スクリーニングを行なった。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の採択以降、研究は順調に進展した。それに伴って、関連する論文2報・学会発表9報を公表した。本研究の進展によって、プロテアソーム分解系が受精直後から2細胞期の胚性遺伝子の活性化に関与することを示すことができた。さらに、昨年度バイオインフォマティクス解析によって同定した受精直後の胚においてプロテアソーム分解系の標的となると予想される母性タンパク質(ヒストン修飾・クロマチンリモデリング因子・ヒストンシャペロンに機能分類)と相互作用因子の探索を進めた。本年度の研究進捗を経て、受精後の母性-胚性移行時期におけるプロテアソーム分解系の関与を明らかにする知見が順調に得られていると判断された。
当初の研究計画に従って、受精直後の胚においてプロテアソーム分解系の標的母性タンパク質として同定された候補タンパク質と相互作用するタンパク質群が受精直後のクロマチン構造の変化で果たす役割について解析を進める。さらに、受精直後から2細胞期の母性-胚性移行時期においてプロテアソーム分解系が関与するエピジェネティック・リプログラミングの分子制御機構の解明に向けた知見獲得を進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
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