研究課題
脾臓初期発生に必須の転写因子であるTlx1の遺伝子座にCreER-Venusをノックインしたマウスを用いて、Tlx1の発現を指標として脾臓間葉系細胞の起源ならびに機能について解析を行った。その結果、Tlx1発現細胞は脾臓にのみ存在する間葉系細胞であり、線維性細網細胞、濾胞樹状細胞、赤脾髄線維芽細胞などの成熟ストローマ細胞マーカーを発現せず、リンホとキシンβ受容体、血小板由来増殖因子受容体(PDGFRα/β)ならびにCD105陽性の間葉系幹細胞様の性状を示した。また、胎仔期、新生仔期ならびに成体脾臓のTlx1発現細胞の分化運命をRosa26-tdTomatoマウスを用いて追跡した結果、Tlx1発現細胞は、線維性細網細胞、濾胞樹状細胞、辺縁帯細網細胞ならびに赤脾髄線維芽細胞に分化する能力を有することが明らかになった。また、腎臓被膜下に移植した新生仔脾臓被膜から脾臓が再生する過程においても、Tlx1発現細胞は様々な成熟脾臓間葉系細胞に分化することから、Tlx1発現細胞は成体においても脾臓微小環境の維持に必須の脾臓特異的間葉系幹細胞として機能することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究目標の項目1「Tlx1を発現する脾臓間葉系細胞の脾臓微小環境形成における役割の解明」については、免疫反応ならびに髄外造血などの状況以外の、発生ならびに再生過程におけるTlx1発現細胞からの間葉系細胞の分化について明らかにした。項目2「脾臓間葉系細胞株の樹立とその分化能などの性状の解明」については、Tlx1発現脾臓間葉系細胞株の樹立には成功していないが、脾臓に存在するTlx1発現細胞の表面抗原や遺伝子発現解析は終了した。単離した細胞の間葉系細胞系列(脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞)への分化能については脂肪細胞への分可能を確認しているが、それ以外の細胞への分化については現在検討中である。項目3「脾臓間葉系細胞の形成ならびに機能の転写因子による制御機構の解明」については、現在、脾臓間葉系細胞特異的Meis1, pKnox1欠損マウスを作製し、解析を行っているところである。項目4「腎被膜下移植法を用いた脾臓間葉系細胞による免疫および造血ニッチ再構成系の確立」については、Tlx発現細胞単独での再構築には成功していないが、新生仔脾臓被膜を腎被膜下へ移植する系で、Tlx発現細胞が脾臓の再構築に関与していることを明らかにしている。
1) 免疫反応や髄外造血など脾臓微小環境がダイナミックに変動する過程におけるTlx1発現細胞の分化や機能について解析を行う。2)単離したTlx1発現細胞の間葉系細胞系列(脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞)への分化能についてより詳細に解析を行う。3)脾臓間葉系細胞特異的Meis1, pKnox1欠損マウスを用いて、Tlx1発現細胞の機能をより詳細に明らかにする。4)Tlx1発現細胞を除去することの脾臓再構築に及ぼす影響について明らかにする。
Tlx1-floxマウスを購入する予定だったが、ES細胞の品質管理の段階で不備が見つかり、購入ならびに輸送に関わる支出が発生しなかったため。
購入せずに、独自にTlx1-floxマウスの作製準備を行っており、その経費として使用する。
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