生物試料は成分の70~80%が水であるため、高真空環境(10-3-10-7Pa)を必要とする電子顕微鏡で観察するには、事前の化学固定や脱水が不可欠と考えられてきた。しかしこれらの処理は、試料の変形やアーティファクトを生じさせる為、従来法による観察・解析による結果は、生体本来の構造を正確に捉えてはいなかった。本研究では全く新しいアプローチで生物試料の高真空・高分解能観察に取り組んだ。昆虫の体表面物質(および疑似物質)を試料に塗布し、電子線およびプラズマ照射により体表全面に高気密”NanoSuit”を形成することにより、高真空中で試料を生きたまま維持・高分解能観察することがはじめて可能となった。
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