研究課題/領域番号 |
25292201
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
野田 博明 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫微生物機能研究ユニット, 研究員 (40343991)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 共生細菌 / ツマグロヨコバイ / バクテリオーム / PGRP |
研究概要 |
ツマグロヨコバイのバクテリオームで発現する遺伝子のEST解析から、PGRP遺伝子が比較的多く発現していることがこれまでに判明しており、その遺伝子の数が300にも及ぶことが明らかとなっている。昆虫のPGRP遺伝子は、ショウジョウバエで13本、カイコで12本、ミツバチで4本であり、格段に遺伝子数が多い。PGRPドメインと思われる配列はどの遺伝子もほぼ持っているが、全体に配列長の短いものが多く、ショウジョウバエなどで一部のPGRP遺伝子が持っている酵素活性(アミダーゼ活性)は、有しないと推察された。シグナルペプチド配列も有していないことから、体液中に放出されるのではなく、バクテリオームの中で働いていると考えられる。このことは、PFRPタンパク質(NcPGRP12)のウエスタンブロットからも、バクテリオームでの局在が認められた。抗生物質を投与することにより、バクテリオーム内の共生細菌の数を減少させると、PGRP遺伝子の発現量も顕著に減少する(他のハウスキーピング遺伝子2種の減少は認められない)ところから、共生細菌の存在とPGRPの存在とが密接にかかわっていることが推察された。 PGRP1(最も多く発現していたPGRP遺伝子)とPGRP12(配列長が一番長いPGRP遺伝子)のRNAiを試みたが、顕著な表現系は観察されなかった。PGRP遺伝子は数が多く、一つや二つの遺伝子のRNAiでは、影響が見られないのかもしれない。また、PGRPに細菌のペプチドグリカンが結合するかどうかを調査するために、PGRP12遺伝子を大腸菌で発現させ、グラム陽性・陰性の細菌のペプチドグリカンとの結合を観察した。明瞭な結合を証明することができなかったが、これは実験操作の問題(タンパク質の沈殿が起きやすいなど)であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の大半を実施できた。現在、バクテリオームで高発現している遺伝子の機能解析を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
バクテリオームで高発現する上位3遺伝子の機能を解析するために、26年度には、この上位3遺伝子のRNAiを行う。これらの遺伝子のgene silencingが他の遺伝子の発現にどのような影響を与えるかを、ツマグロヨコバイのマイクロアレイを用いて明らかにする。 また、バクテリオームに共生している細菌2種(SulciaとNasuia)のゲノムをすでに解読しており、これらのゲノムの特徴と細菌の機能を詳細に検討し、宿主との相互作用を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
雇用を予定していた研究支援者が都合により退職したので、人件費の支出が予定より大幅に減ったため。パートを新たに雇用し、研究を継続した。また、年度後半の3ヶ月は研究支援者を雇用できた。それらの影響により、予定していた試薬購入などを次年度に繰り延べした結果も、当該年度使用額に影響した。 今年度は、研究支援者を4月から雇用し、試薬などの購入も順調に進むことが期待できること、さらには、関連研究成果の公表なども予定しており、研究費の順当な利用が期待できる。
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