研究課題/領域番号 |
25292202
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
瀬筒 秀樹 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット, ユニット長 (70342805)
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研究分担者 |
河本 夏雄 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット, 研究員 (30355747)
冨田 秀一郎 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット, 研究員 (30360457)
畠山 正統 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫成長制御研究ユニット, 研究員 (50281142)
新美 輝幸 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (00293712)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / ゲノムエディティング / トランスジェニック昆虫 |
研究概要 |
カイコでのゲノムエディティング法の開発では、様々な遺伝子を標的とするTALENを自作し、遺伝子ノックアウト個体の作出を行った。また、EGFP遺伝子をマーカーとしたドナーを用いた遺伝子ノックインについても、検討を開始した。さらに、CRISPR/Cas9系の効率を上げるために、Cas9ヌクレアーゼを恒常発現する遺伝子組換えカイコの作出を開始した。導入遺伝子発現制御のためのバイナリ発現調節システムの開発では、プロモーターに関しては血球、全身等で発現するプロモーターの単離に成功し、エフェクターに関しては細胞死誘導遺伝子等の候補の検討を行った。 カブラハバチでは、眼で特異的にEGFP遺伝子を発現し、遺伝的に白眼突然変異を遺伝的バックグラウンドに持つ系統を用い、EGFP配列を標的に設計したTALENのmRNAを卵に顕微注入し、単為発生を誘導してG0雄個体を得た。これらのG0雄では蛹期に生存個体の60%以上でEGFPモザイクが検出された。EGFPモザイクG0雄の標的ゲノム配列には欠失が確認でき、ハチ目ではじめてTALENによる遺伝子ノックアウトの有効性を示した。 テントウムシと同じコウチュウ目昆虫のコクヌストモドキにおいて、核多角体病ウィルス由来の高発現プロモーターであるBmNPV ie1プロモーターが機能することを確認した。本プロモーターはチョウ目、ハエ目、コウチュウ目という広範な昆虫目で機能することから、極めて汎用性が高いことが明らかとなった。また、バイナリ発現調節システムとしてテトラサイクリンOFFシステム(Dm-hsp70-tTAとtetO-EGFP)がコクヌストモドキにおいて機能することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TALENやCRSIPR/Cas9を用いたゲノムエディティングは、様々な生物種で世界的に積極的に進められており、多くの有益な情報やツールを入手できるため、本研究も効率良く研究を進めることができている。チョウ目カイコでは、自作したTALENを用いた遺伝子ノックアウトを既にルーティン化することができている。また、ハチ目カブラハバチで初めてTALENによる遺伝子ノックアウトの有効性を示し、コウチュウ目コクヌストモドキにおいてTet-offシステムが機能することを初めて確認できており、達成度は高い。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果を基にして、カイコ等のチョウ目昆虫では、TALENやCRISPR/Cas9等による遺伝子ノックアウト技術を高度化しながら進め、カイコの性決定、不妊化、性行動等に関わる様々な遺伝子の機能を阻害した個体を作出する。さらに、遺伝子ノックイン法やバイナリ発現システムとの組み合せを検討しながら、条件的な遺伝子ノックアウト・ノックインの誘発法を開発する。 カブラハバチ等のハチ目昆虫では、ノックアウト個体の系統化の可否、およびノックアウト系統をSNPを利用して検出・選抜する方法を確立する。さらに、生殖巣特異的に発現する遺伝子を標的にして TALEN を設計し、ノックアウト個体(系統)の作出と、遺伝子機能の解析を行う。 テントウムシ等のコウチュウ目昆虫では、GFPをテストケースとして、GFP発現形質転換ナミテントウを用い、ナミテントウにおけるTALENによる遺伝子ノックアウト法を確立する。また、新規に作製されたベクター等の検証が必要な場合は、ナミテントウやハエ目昆虫のショウジョウバエで行う。 以上の研究等を推進することによって、様々な昆虫目で汎用できるゲノム編集法、バイナリ発現システム、マーカー遺伝子の開発をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度が本研究計画の初年度ということもあり、本研究の一部(特にコウチュウ目やハエ目における研究等)においては研究スキームの検討と実験の立ち上げを重視し、H26年度以降に集中的に実験等を行って研究を効率的に進めることとした。そのために、次年度使用額を確保する必要があった。 確保した助成金を用いて、特にコウチュウ目やハエ目における研究において、消耗品または研究補助に対する謝金に当てる等により、H26年度以降に効率的に研究を推進する。
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