研究課題/領域番号 |
25292210
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大久保 悟 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30334329)
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研究分担者 |
宮下 直 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50182019)
大黒 俊哉 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (70354024)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 生態系機能 / 生態系サービス / 景観生態学 / 景観計画 |
研究概要 |
これまでの調査実績があるインドネシア・西ジャワにおいて,熱帯高地林がわずかながら残存し,その下流に二次林や水田,畑地が広がる農業景観を調査地に選定した。まずは,対象地域の土地利用図を高解像度衛星画像から作成した。対象地の土地利用は,残存天然林,天然林の周辺に位置する広葉樹および針葉樹植林地,熱帯地域に特有の土地利用である,果樹を中心とした樹木園と竹林,畑地,水田,集落の8タイプに分類した。土地利用図をもとに,森林から農業生態系の人為攪乱傾度に沿うように生物相調査地点を設定し,今年度は鳥類の調査を,残存天然林で22地点,広葉樹植林地で13地点,針葉樹植林地で11地点,樹木園で13地点,竹林で13地点,畑地で12地点,水田で15地点,集落で13地点,合計112地点で,点センサス法によって行った。土地利用による種数および種組成の違いを解析したところ,残存天然林は最も種数が豊富であるとともに,森林スペシャリスト種を中心とした固有の組成であることがわかった。調査地点を中心に半径50m円内の植生構造,天然林までの距離(天然林内の調査区の場合は天然林縁までの距離のマイナス値)および土地利用を説明変数とし,全種数および機能タイプ別の種数を応答変数とした一般化線形モデルを使った解析を行ったところ,森林スペシャリスト種数や食虫性種数には森林縁までの距離が負に影響する結果となった。森林スペシャリスト種数は全種数やインドネシア固有種数については土地利用の違いが強く影響し,いずれも天然林が最大であったが,果樹を中心とした樹木園でインドネシア固有種数が高いことがわかった。これらのことから,鳥類でみた場合,森林スペシャリスト種を保全するために天然林の保護は必須であるが,一部の生態系機能に関わる種群やインドネシア固有種の生息地として,人為生態系,とくに伝統的なアグロフォレストが重要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定より調査地の選定が順調に進んだため,次年度の計画を前倒しして,生物相調査を今年度行うことができた。また,地域農民への聞き取り調査も順調に進み,生態系サービスへの認識に影響する要因分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定したインドネシアでの調査が予想以上に順調であることから,残りの二年間では,温帯地域である日本国内での調査も実施し,モンスーンアジアスケールでの農業生物多様性と生態系サービスに関する知見の集積を目指す。
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