研究課題/領域番号 |
25292215
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松尾 一郎 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40342852)
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研究分担者 |
清水 弘樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス部門, 研究員 (30344716)
園山 正史 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40242242)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 界面活性剤 / 膜タンパク質 / 糖鎖合成 / 有機合成 / 等温滴定型熱量計 / 臨界ミセル濃度 / 立体選択的グリコシル化 |
研究実績の概要 |
本研究では,新規糖結合デタージェントの開発を目的に,親水基の配向・糖分子の修飾に加え,分岐構造を有する新しいデタージェントの合成を行う。これまでに,水酸基の配向が異なる糖残基を有するオクチルグリコシド4種類、グルコースの水酸基をフッ素原子に変換したF-オクチルグルコシド3種類を合成した。本年度は,1)2-F-オクチルグルコシドの合成:オクチルグルコースを出発原料として2位にフッ素原子を有するデタージェントを合成した(収率10%,10 steps)。一方,合成工程を簡略化するために,鍵中間体である2位に遊離の水酸基を有するβ-オクチルマンノシド誘導体を一段階で構築可能なマンノース供与体(2位にTBDPS基、3位にベンジル基,4,6位をベンジリデン基で保護したチオフェニルマンノシド供与体)を見いだした。2)分岐型糖鎖の合成:分岐構造を有するオリゴ糖として,N-結合型糖鎖のコア5糖構造の合成を行った。ガラクトシルキトビオース3糖に対して3位にPiv基を有するマンノース供与体を一段階で導入することで分岐型5糖が構築できることを確認した。3)フッ素原子を有するデタージェントの物性測定:今年度新たに合成した2-F-グルコース誘導体のCMC測定を検討した。しかし,水に対する溶解度が低くCMC測定ができなかった。これまでの結果をまとめると,2,4,6位にフッ素原子を有するグルコース誘導体は水に対する溶解度が低く,3位にフッ素原子を有するグルコース誘導体のみがオクチルグルコシドと同等のCMCを有することが明らかとなった。4)フッ素原子を有するデタージェントの物性測定:3-F-グルコース誘導体を用いてバクテリオロドプシンの可溶化実験を行った。その結果,オクチルグルコースと同様にタンパク質を可溶化できるが,タンパク質の安定性が低下することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度に予定していた分岐型マンノオリゴ糖を有するデタージェントの糖鎖部分の合成が確認できたこと,β-マンノシド結合を効率的に構築する新規マンノース供与体を見いだしたこと,そしてβ-オクチルマンノシド誘導体の選択的合成法が確立できたこと,グルコース中にフッ素原子を系統的に導入したフルオロデタージェント4種類の合成が完了し,CMC測定法を行ったこと,3位にフッ素原子を有するオクチルグルコース誘導体については,モデルタンパク質に対する可溶化実験に供することができたことより,おおむね順調に進展していると判断した。デタージェント合成に必要な単糖シントンは昨年度に続き,100グラムスケールで充実させる。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は,最終年度になるため,デタージェントの合成では,フッ素含有デタージェントを継続して合成する。また分岐型オリゴ糖の合成と2位にアミノ基を有するデタージェントを合成する。分岐型オリゴ糖についてはアルキル鎖の長さが異なる誘導体を合成し,デタージェントとして利用可能なCMCを有する誘導体を合成する。 データジェントの評価は,3-Fグルコースを中心にモデルタンパク質の可溶化実験を進める。今年度明らかとなった水酸基の有無によるモデルタンパク質の安定性の変化について,その原因究明を進める。
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