研究課題/領域番号 |
25292216
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北島 健 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (80192558)
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研究分担者 |
佐藤 ちひろ 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 准教授 (10343211)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 受精 / 精子 / 生理活性 / 蛋白質 / カルシウム調節 / 受精能獲得 / GPIアンカー |
研究実績の概要 |
精子マイクロドメインに局在して高度に糖鎖修飾されたGPI-アンカータンパク質(Gapglycanと総称)の普遍的存在と、そのCaイオン調節機構を解明するために、Gapglycanの哺乳類とウニ以外の生物種における普遍的存在の証明(項目1)と、Gapglycanによる細胞内Caイオン調節機構と役割の解明(項目2)を行う。 項目1については、まず、鳥類ニワトリと両生類アフリカツメガエルについて、分子の探索を生化学的に推進した。両者ともに興味深い分子が見出され、ニワトリについては、さらに単一分子になるまで精製することができた。また、ニワトリGapglycanに対する特異抗体の調製に成功した。一方、マウスやヒトGapglycan(CD52)と比較して遺伝子座のシンテニー解析を行った結果、遺伝子としてニワトリに相同分子の存在が示唆された。一次構造上は哺乳類CD52とも似ていないがGapglycanの範疇にある分子であることが予測され、上述の生化学的に精製した分子との異同について今後検討する予定である。次に、マウスGapglycan(CD52)については、既報と異なる局在を示す分子がしかも大量に存在することを見出し、現在その分子の同定と検証を継続している。 項目2については、まず、ブタGapglycanと相互作用するCaポンプ/チャンネルの探索と同定については、プロテオミクス解析では、該当する分子の存在は見出せず、方法を再検討する必要があることがわかった。一方、Gapglycanとマイクロドメイン上で相互作用する分子として、卵膜と相互作用する分子群が新たに見出され、今後、これらが細胞内カルシウム制御に関わる可能性を探る予定である。また、上述のニワトリGapglycanに対する特異抗体を用いて細胞内カルシウムへの効果を調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
項目1のGapglycanの生物種を越えた普遍的存在証明については、平成26年度では鳥類ニワトリにおいて飛躍的に研究を進めることができた。生化学的アプローチによってGapglycanの候補分子が単一成分にまで精製した一方、遺伝子配座シンテニー解析によって哺乳類Gapglycanに相当する遺伝子が見出された。後者の成果は計画立案時にはない計画であったが、研究を加速させる成果である。今後、これらが一致することが証明できれば、脊椎動物内で初めて哺乳類枠を超えたGapglycanの存在証明となる。また、特異的なモノクローナル抗体の調製が完成し、分子の局在、精子運動、カルシウム調節機構解析の基盤となるプローブが確立できた意義は大きい。項目2のGapglycanによる細胞内Caイオン調節機構の解明については、生化学的にブタGapglycanと相互作用するCa輸送体を同定することは困難であることがわかったが、いくつかの受精において重要な機能が知られている分子が相互作用分子として同定されたので、細胞内カルシウム調節との関係を探る予定であり、順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
項目1については、Gapglycanが広く動物種に存在することを証明するために、(1)平成26年度において鳥類ニワトリの精子からGapglycanとして単離した糖鎖に富むGPIアンカータンパク質SpGPについて今後以下のことを行う:(i)アミノ酸配列と糖鎖構造情報を得る;(ii)平成26年度にSpGPに対して調製したモノクローナル抗体3G11を用いて、生合成および局在部位を特定する;(iii)3G9抗体を用いてSpGPの細胞内Caイオン濃度に対する効果を調べる; (iv)鳥類ウズラのSpGPを探索し、ニワトリとの構造的差異と機能的相同性を検証する。一方、(2)平成26年度において、哺乳類GapglycanであるCD52のニワトリ相同遺伝子CD52-like (CD52L)をシンテニー解析により同定した。現在、CD52LがSpGPであるとの仮説をもっており、その検証をCD52Lの構造的異同を解明し、遺伝子発現部位を調べることによって明らかにする。(3)さらに、同様のシンテニー解析を行って、カエル、イモリ、メダカ、ゼブラフィッシュなど他生物種のCD52L遺伝子を探索し、検証を行う。項目2については、(1)平成26年度に同定されたブタGapglycanと相互作用する分子が細胞内カルシウムイオン制御に関与するかどうかを検証していく。 (2)また、マウスGapglycan遺伝子改変マウスを入手し、その精子マイクロドメインの構造とCaポンプ/チャンネル機能の変化を調査する。
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