研究実績の概要 |
現在、日本人の半数以上が何らかのアレルギー疾患を有しており、特にダニアレルギーは重篤な喘息症状を引き起こすためその対策が急務である。本研究では、ダニアレルギーの正確な診断及びアレルギー疾患の唯一の根治療法であるアレルゲン特異的免疫療法の治療成績向上のために、ダニアレルギー患者が感作されているアレルゲンを正確に診断するための分子種診断技術(CRD, component-resolved diagnosis)を構築し、高精度の診断並びに効果的な免疫療法を実現するための分子基盤整備を目的とした。昨年度までに、計23種類のダニアレルゲン分子を可溶性タンパク質として発現・精製に成功し、ダニ主要抗原であるDer f 1については全長型と成熟型のDer f 1の両方を使用することで、天然型Der f 1と一致する検出系が構築できることを明らかとした。そこで、今年度は、構築したCRD法を使用し、病態が明らかとなっているダニ喘息患者のIgE反応プロファイルと臨床データを比較することにより、臨床でのCRDの意義と有用性を検証することを目的とした。 従来型ダニIgE検査法であるRAST法で陽性を示し、臨床症状の判明している22検体のダニ喘息患者血漿を用いて構築したCRD法により患者毎のIgE反応アレルゲンプロファイルを解析した。その結果、患者によりそのプロファイルが異なる所見を認め、従来法であるRAST値とCRDによる反応アレルゲン数の間に明確な相関は認められなかった。一方で、病態が喘息のみ、喘息とアレルギー性鼻炎、喘息と鼻炎、更にアトピー性皮膚炎を合併している患者間でその重症度とRAST値、CRDプロファイルを解析した結果、RAST値と病態の間に関連性は認めなかったが、病態がひどくなるにつれ、CRDプロファイルで50%以上の高頻度で反応するアレルゲン数が増加しており、CRDにより臨床病態の悪化が予測できると示唆する所見が得られた。
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