OsIRE1遺伝子のヌクレアーゼ活性をアミノ酸配列の置換による点変異導入により特異的に欠損させた改変遺伝子を作製し、この改変遺伝子を相同組換え手法によりイネに遺伝子導入した相同組換えイネを準備した。この相同組換えイネと普通のイネをERストレス処理により発現される転写産物をRNAシークエンスで解析することで、普通のイネでERストレス応答した遺伝子群の中から、OsbZIP50転写因子の制御下にあるERストレス関連遺伝子群を見出すことを進めた。少なくとも38076の転写産物の中、380がERストレスに応答した。ERストレス処理で195の転写産物が増加し、185が減少した。17個がマイクロアレー解析では見出せなかった新規遺伝子であった。Hrd3/SEL1LはHrd1E3ユビキチンリガーゼ複合体のコンポーネントであり、フォールデイングが上手くいっていないタンパク質を認識し、小胞体関連分解機構により小胞体から排出され細胞質でユビキチン系での分解、品質管理に寄与する小胞体関連分解機構に関与することが期待される。そこで、タンパク質発現が顕著な種子登熟期における小胞体関連タンパク質分解機構の役割を明らかにするため、イネのHrd3遺伝子を、胚乳特異的に発現を抑制した。その結果、種子タンパク質の中でグロブリンおよび16kDプロラミンの発現が顕著に抑制された。また種子タンパク質の中で、システイン残基に富むRM1や10kDのプラミンの凝集が変化した。さらに、タンパク質のポリユビキチン化が減少し、小胞体ストレスが高まることが観察された。したがってHrd3を介したポリユビキチン化は小胞体品質管理において重要であることが明らかになった。
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