小胞体ストレスによって誘導されるIRE1のヌクレアーゼ活性によりある種のストレス関連する分泌タンパク質のmRNAが分解され、小胞体ストレスの制御に関わる機構(RIDD)があることが報告されている。我々は植物の栄養組織ではある種の分泌タンパク質(感染応答タンパク質)がERストレスの過程でRIDDの制御を受けていることを明らかにしてきた。しかし、植物でのRIDDに関する詳細の分子機構はほとんど明らかにされていない。この理由は植物そのものを利用して、RIDD制御を受ける分泌タンパク質のmRNAのIREI感受性を解析するのが困難なことによる。そこでプロトプラストを用いた一過的発現による解析で、種子登熟過程で大量に分泌タンパク質として生合成される種子貯蔵タンパク質のmRNAが、RIDDによる小胞体ストレス応答により蓄積レベルの制御を受けるのかを調査した。CaMV35Sプロモーターの制御下でプロトプラスト中に発現させたイネ貯蔵タンパク質の中で16kDaプロラミン、10kDaプロラミン 26kDaグロブリンのmRNAが小胞体ストレスの制御を受け、mRNAレベルが低下したが、グルテリンにおいては低下が観察されなかった。一方、ゲノム編集によりIRE1のヌクレアーゼ活性をなくした改変IRE1を発現したイネから由来するプトトプラストを用いた解析ではmRNAの低下は観察されなかった。これらの結果から、一部の貯蔵タンパク質の生合成においてはRIDDを介した小胞体ストレス応答の制御をうけることを明らかになった。さらに貯蔵タンパク質のmRNAの組換えIRE1タンパク質による切断サイトを同定し、IRE1ヌクレアーゼの基質となるRIDDのターゲットの構造を決定した。
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